樋口由紀子
茹でたらうまそうな赤ン坊だよ
根岸川柳 (ねぎし・せんりゅう) 1888~1977
久しぶりに赤ん坊を抱いた。赤ん坊は無垢で、まるまる、つやつやしていて、本当に可愛い。こちらまで心が浄化されそうである。今の赤ん坊は生れたときからしっかりした顔つきをしている。環境と栄養のおかげだろうか。
ふと、掲句を思い出した。それにしても「茹でたらうまそうな」などとはよく思いつくものだ。いったいどうしたらこんなことを考えつくのだろうか。もちろん、新米パパ、ママには言わない。口に出したら、そんな目で赤ん坊を見ているのかと度胆を抜かれ、抱いている赤ん坊を急いで取り上げられてしまうだろう。しかし、赤ん坊に対してこれほどの褒め言葉はないのかもしれないとも思う。思いがけないものがぽんと投げられたような一句。自由な豊かな連想力である。根岸川柳のエンタテイメントなのだ。
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