樋口由紀子
こんにちはぽろぽろ。さよならぽろぽろ。
竹井紫乙 (たけい・しおと) 1970~
「こんにちは」は出会ったときのあいさつのことば。「さよなら」は別れるときのあいさつのことば。それにそれぞれ同じ「ぽろぽろ」と句点がついている。「ぽろぽろ。」は同じ意味で使われているのだろうか。軽いものが一つ一つ落ちるさまだから、涙もそうだし、出会いも別れも「ぽろぽろ」と言われれば、「ぽろぽろ」のイメージとぴったりと合う。
しかし、わざわざ「。」がついている。それだけじゃないよと言われているみたいで立ち止まる。組み合わす言葉や表記によって言葉は変容する。「ぽろぽろ。」が言葉の持っているたたずまいや不思議さをくるくると回転させながら見せてくれているような気がする。まったく濁っていない川柳である。『菫橋』(港の人 2019年刊)所収。
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