相子智恵
ぜんざいを食べて優しい鬼になる 森田智子
ぜんざいを食べて優しい鬼になる 森田智子
句集『今景』(2020.9 邑書林)所載
今年の節分は明日、2月2日で、これは124年ぶりのことなのだそうだ。
掲句、節分の鬼役をする人だろう。赤色は魔除けになり、福をもたらす陽光の色であることから、関西などでは節分に小豆を使った食べ物を食べる地域も多く、〈ぜんざい〉も厄除けに食べたりするようである。関東育ちの筆者には馴染みのない風習だが、コンビニで恵方巻が売られるようになって初めて関西の恵方巻を知ったし、こうした様々な地域の文化に触れるのは楽しいものだ。ちなみに筆者の故郷では、節分には「蟹柊」や「かに」と書いた紙を戸口に貼る。これも限られた地域の魔除けの風習であろう。
〈優しい鬼になる〉がいい。豆まきが終わって〈ぜんざい〉を食べたのだろうか。豆に打たれる鬼役は恐ろしくあらねばならないが、甘いぜんざいを食べてほっと一息、笑顔に戻ったという場面なのかもしれない。
また〈優しい鬼になる〉は、そのまま読めば本物の鬼のことだとももちろん読めるわけで、そこがまた面白い。ぜんざいを食べて優しい鬼になるのなら、鬼退治もたいそう楽しいのである。
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