樋口由紀子
コンビニへ愛と勇気を買いに行く
須藤しんのすけ
「愛と勇気」だなんて、なんと大げさでベタな言葉かと一瞬後退りしたが、生きていくためには必要不可欠なものである。いい格好なんかしていられない。売っているのなら今すぐにでも買いに行きたい。
陳列されている品々にほっこりして、元気づけられる。安価な甘いスイーツ、弁当には半額シールが貼られている。「愛と勇気」の甘酸っぱさと嘘っぽさが並んでいて、「コンビニ」でしか得られないものが確かにある。高級洋菓子店や三ツ星レストランでは川柳になりにくい。
私の若い頃にはコンビニはなかった。「愛と勇気」はどこで調達していたのだろうか。村の駄菓子屋か、百貨店の大食堂だったかな。その時代時代に無理やりにでも見つけ出して、日々を遣り過す。「愛と勇気」をダサいと思って、おろそかにしていたら、だんだんとこの世から姿を消して、きっと取り返しつかなくなってしまう。「おかじょうき」(2020年刊)収録。
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