相子智恵
月の客電柱数へつつ帰る 北山順
月の客電柱数へつつ帰る 北山順
句集『ふとノイズ』(2021.7 現代俳句協会)所載
この月見の客は自分のことなのだろうと思った。〈月の客〉の”ハレ”に比べて〈電柱数へつつ帰る〉が、あまりにも”ケ”で、その落差に脱力し、妙な虚しさになんだか笑ってしまう。
みんなで月見を楽しんだ後の、ひとりの帰り道。やや見飽きた月を見上げながら、月の宴で友人らと話したことなどをぼんやりと反芻しながら帰っているのだろう。月の前には、電柱。気づけば月からは目が離れ、電柱の数を数えながら帰っていた。
現代のあわれが描かれていて、今の雪月花というのは、案外こんな感じなのかもしれないなと思う。
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