樋口由紀子
鮎二ひきしばらく焼かず皿の上
前田雀郎(まえだ・じゃくろう)1897~1960
今年の秋刀魚は高騰でなかなか手がでなかった。しかし、一度は食べたい。やっと買ってきて、まな板の上に乗せたとき、ふとこの句を思い出した。まな板であり、二ひきではなく、舞台設定は異なるが、「しばらく焼かず」にいたく納得し、じっと眺めていた。
「敢えて、『二ひき』と数を限ったのは、その美しいという印象を強めるため、余計なものを捨てたのであり、『皿の上』もまた、注意をここに染めるために設けた一つのワナであって、必ずしも眼前のそれをいったものでない。」と雀郎は自句自注でわざわざ書いている。「鮎」であったどうかもあやしい。「鮎」は「秋刀魚」より確かに絵になり、サマになる。しかし、秋刀魚も食べてしまうのはもったいないくらい青く光って、映えている。
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