樋口由紀子
婚約者と会わねばならぬ大津駅
樋口由紀子 (ひぐち・ゆきこ) 1953~
いろいろと想像してもらった私の川柳である。息吐くように口から出た。なぜ、「大津駅」だったのか。実際に大津駅で乗降したことがあるが、特別な印象も、特別な出来事があったわけではなく、どんな駅だったか記憶にもないくらいだ。ただ「大津」という言葉は「大津絵」を観たあとだったからかもしれない。もちろん因果関係はない。
「婚約者」に会うのはあたりまえだから、「会わねばならぬ」とわざわざいうのはなにかへんである。「婚約者と会わねばならぬ」という措辞をよりへんにするために「大津駅」を装飾したのか。もちろんそんな事実はない。空想の世界にいるときがある。なんだかわけのわからない心境をたぶん書きたかったのだろう。『めるくまーる』所収。
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