樋口由紀子
このゆれは着替えなくてもよい地震
水本石華 (みずもと・せっか) 1949~
地震が各地で頻発している。本当に怖い。地震が来るとわけのわからない恐怖で身体が一気に縮こまる。地震の規模は後で数字によって知らされるが、人は瞬時に経験でその度合いを判断する。その査定結果が「着替えなくてもよい」だった。
どれくらい地震だったのか、なぜ着替えなくてもよいのかは、共有している認識で、理由は書かれていなくても誰にでもすぐに理解できる。ポエジーとは無縁の位置で生活者の声をすんなりと立たせて作品にする。川柳の一つの姿である。「着替えなくてはならない」や「着替える時間もない」の地震がやってこないことを願うばかりである。「晴」(5号 2022年刊)収録。
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