西原天気
※樋口由紀子さんオヤスミにつき代打。
雨の音 確かなレとか君のファとか 高橋由美
「レ」の音は、周波数にして36.708Hzとほぼその倍数。この句の言う〈確かなレ〉が物理的に〈確か〉なものを指すのかどうかは置いておいて、さしあたり、平均律というルール・法則における「レ」はそう。
「ファ」は、上記を基準にすれば、43.654Hzとほぼその倍数。でも、〈君のファ〉が、そうかどうかはわからない。というか、問題ではない。
周波数・ピッチに限定する必要はない。響きとか、音色とか、あるいはちょっと縒れちゃってるかもしれない。けれども、〈君のファ〉は君のもので、きちんと鳴っている「レ」とそうじゃないかもれない〈君のファ〉は、この世に同居する、共生する。
雨の音は、規則正しいようでいて、そうではないリズムも混じる。雨に限らず、この世は、規範と逸脱、整合と不整合、秩序と混沌、規律と自由の両方があって、美しい。
きっと〈確か〉ではない〈君のファ〉も、そんな美しさの一部をかたちづくっている。
なお、私の/自分のファではなく「君」というところ、句が外に向かってひらいていて、気持ちがいい。
さらに追記するに、下の6音(3音+3音)が余韻/残響。この箇所も気持ちがいい。
掲句は『川柳木馬』第172号(2022年4月)所収。
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