樋口由紀子
柿の木の下にリンゴが落ちている
嶋澤喜八郎 (しまざわ・きはちろう) 1937~
柿の実がたわわになっている。その木の下に柿に混ざってリンゴが落ちていたのだろうか。それとも新緑か紅葉か、裸木のときか。川柳はどの季節でもそれなりの対応ができる。
柿の木の下に落ちているものは柿の実とは限らない。空き缶だって携帯だって、いろんなものがある。それを「リンゴ」と限定したところがミソである。もちろん、柿の木からリンゴが落ちるなどとは誰も思わない。その思わないところを敢えて突いている。一瞬スキをつき、混乱させ、すぐに安心させる。ただ驚いてみせただけである。こういう景を見過ごさないところに川柳の見つけがあり、そこに川柳の軽みがある。
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