樋口由紀子
象をはんぶんこしませんか
加藤久子 (かとう・ひさこ) 1939~
最初に読んでときはぎょっとした。はんぶんこされるのは「象」である。生き物である。そんなことはできるわけがない。
ふと、この句は世界のあちこちで起こっている紛争や些細なことでいがみあっているこの世を解決する手段をいっているのではないかと思った。だから、「はんぶんこしませんか」とやさしく問いかけているのだ。この象は生身ではなく、絵に描いた象か、それとも象のかたちをしたパンかお菓子か、それらを含めて、象のようにおおらかでと力あるものを「はんぶんこしませんか」と提案している。全部取り込んで、独り占めはしない。そうすれば、みんなが平和に暮らしていける。字足らずで破調になっているところがよけいに強度を増し、胸に響いた。
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