2024年7月8日月曜日

●月曜日の一句〔黒岩徳将〕相子智恵



相子智恵






スーパーに会ふ妹のサングラス  黒岩徳将

句集『渦』(2024.5 港の人)所収

この兄妹はすでに成人している、あるいは学生だとしても大学生くらいか、と想像する。家族みんなで一緒に出かけることもなくなり、子ども達が、自分の食べたい物を、ふらふらとスーパーに買いに出かける休日もある。……そんな、個々人が自由になってくる頃の家族の一場面だ。もしかしたら、この妹は、実家を出て近所で一人暮らしなどをしているのかもしれない。

家族を詠んだ俳句の中で、この年代の家族の日常というのは、案外書かれることが少ないことに気づかされる。家族詠は幼い子どもや老いた父母など、誰かが誰かに手を貸さないと暮らせない時期の句が多いものだ。

掲句、「地元的脱力感」のあるサングラスがいい。サングラスと言えば海や行楽……といった特別感は、現代では、すでに薄れてきたといえるのではないか。それほどに地球の夏の環境が厳しくなってきたというのもあるし、ファッションアイテムとして馴染んできたということもある。

それでも、自宅で会う妹とは違う、「一枚羽織った感じ」くらいのおしゃれ感、そのかすかな驚き。この脱力感が現代の俳句だな、と思う。

 

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