樋口由紀子
月に帰り音沙汰無しのかぐや姫
足立信子
月がきれいだ。かぐや姫はどうしているのだろうか。「かぐや姫は月に帰っていきました」で『竹取物語』は幕を閉じた。竹の中に光り輝く女の子がいて、翁媼に大切に育てられ、帝にも求愛されるが、最後は雲に乗った使者が迎えにきて、月に帰っていく。波乱万丈の、とびきり荘厳な物語である。しかし、その後のかぐや姫の消息は一切わからない。
月でしあわせに暮らしているのか。あれだけのドラブルメーカーでもあったのだから、なかなかそうはいかないだろう。おじいさんやおばあさんによくしてもらったのだから、せめて「お元気ですか」「しあわせに暮らしています」と連絡があってもよさそうである。そんな疑問をさらりと皮肉たっぷりに一句にしている。
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