2025年7月25日金曜日

●金曜日の川柳〔福尾圭司〕樋口由紀子



樋口由紀子





ブランコの台詞が三日月になった

福尾圭司

ブランコに乗りながらの言った台詞が空に舞い上がり、三日月になったのだろうか。あるいはブランコが揺れるときの、あのきーきーなどの音が風に乗って、夜空を駆けていったのだろうか。どちらにせよ、その台詞はもはや地上には戻ってこない。「ブランコ」から「三日月」までの距離が空想性や寓話性を帯びながら広がっていく。おおよそいままで川柳と趣きが異なり、ロマンチックでエレガントに仕上げている。

「三日月になった」に寂寥感が伴うが、三日月に象徴される陰影をアニメ映画の一場面のように設定している。センチメンタルに終わらずにまるで手品のように変化する。三日月のブランコはいつまでも揺れているのだろう。「第13回卑弥呼の里誌上川柳大会発表誌」(2025年刊)収録。

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