おんつぼ03
スリム・ハーポ Slim Harpo
山田露結
おんつぼ=音楽のツボ
まず、スーツ(背広)姿に「昭和のおとーさん」風眼鏡というファッションにグッときます。このままベレー帽を被れば福永耕二(俳人)です。
もっとも、名前はスリムですが体型はスリムではありません。スリムと言うべきなのは無駄を一切省いた(ブルース的に言えば贅肉をそぎ落した、俳句的に言えば省略のよく効いた)ギター・ワークでしょう。白眉はストーンズがカバーしたことで知られる「I'm a King Bee」のギター・ソロです。ギター・ソロといっても「チュイ~ン」、「チュイ~ン」、「チュイ~ン」と一弦を三回鳴らすだけなのです(しかも絶妙の間で)。これはたぶん、私が知っている中で最もシンプルなギター・ソロです。蜜蜂(Bee)の刺すイメージなのでしょうが、まさに目からウロコ、コロンブスのタマゴです。ハッキリ言って参りました(ちなみに、「刺す」ことからこの曲で蜂は性的なモチーフとして歌われています。ブルースには蜂のほかに蛇、鯰などが性的なモチーフとして登場する曲が数多くあります)。この、ギター覚えたての中学生でも簡単にコピーできそうなフレーズだけを弾いて平然としている感じが何ともタマリマセン。テクニックだけがギターじゃない、ツボを押さえるとはこういうことなのだ、ということがよーく解ります。このギター・ソロを聴く為だけに彼のCDを買っても充分に価値がある、かもしれません。
スリム度 ★★★★★
ユル度 ★★★
アルバム ブルースの巨人(7) スリム・ハーポ
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