大本義幸句集『硝子器に春の影みち』を読む〔 5 〕
野口 裕
大本義幸句集『硝子器に春の影みち』は、第五章で終わる。全章が自選句ではなく、第一章小西昭夫選、第二章大井恒行選、第三章恩田侑布子選、第四章藤原龍一郎選であり、第五章が近作からの自選句となる。巻末解説に大井恒行が書くとおり、「伝記的事情こそがとりもなおさず、大本義幸の句そのものの解説と近似」している。
わたくしがやんばるくいな土星に輪
ヤンバルクイナは、一九八一年に沖縄本島で発見された新種の飛べない鳥。見つけられずにすんだ方がよかったかもしれない。
初めて土星を望遠鏡で観測したガリレオ・ガリレイは、望遠鏡の性能が悪かったため、土星に輪があることを確認できなかった。途中、地球から土星の輪を観測できない時期があったため、余計にガリレオを混乱させた。
作者は、「身をえうなき物に思なして…」(伊勢物語)、まだ流離の途上にあるかのようだ。
( 了 )
〔参照〕 高山れおな 少年はいつもそう 大本義幸句集『硝子器に春の影みち』を読む ―俳句空間―豈weekly 第11号
〔Amazon〕 『硝子器に春の影みち』
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