大本義幸句集『硝子器に春の影みち』を読む〔 2 〕
野口 裕
第二章 朝の邦
愛咬の歯形となりし鰯雲
他の章にもこの句はあったかも知れない。すっきりした句。混乱の最中にいる、と思われる句の多い章だが、これは愛憎を離れて雲を見ている。他の句群との関係で涼気が一層際だつ。
耳洗う樹木に星の尾は消えて
星の尾が樹木から離れていた頃に何があったのかは、わからない。「耳洗う」とあるところから、想像をたくましくするのみ。
(つづく)
〔参照〕 高山れおな 少年はいつもそう 大本義幸句集『硝子器に春の影みち』を読む ―俳句空間―豈weekly 第11号
〔Amazon〕 『硝子器に春の影みち』
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