〔中嶋憲武まつり・第2日〕
苺チョコ
中嶋憲武
矢も盾もたまらなくなって、苺チョコを買いに行った。
ときどき無性に食べたくなってしまう、明治のストロベリーチョコレート。
小学校5年のころ、近所のお菓子屋さんに毎日買いに行っていた。一枚50円だったと思う。
当時、奥村チヨが、「♪いちごのチョコ いかが いちごのチョコ いかが」という歌に載せてコマーシャルしていた。奥村チヨのファンだったので、なんとなく買ってからというもの病みつきになってしまったチョコレートだ。
その年の暮れから正月にかけて、家族で鎌倉、江ノ島へ旅行したときも、売店でストロベリーチョコレートを買ってもらい、銀紙を破いて楽しく食べていると、見知らぬおじさんに「靴ひもがほどけていますよ」と注意された。傍を歩いていた母は、おじさんに「どうもすみません」と言い、おじさんが去ってしまうと、ぼくに「人様に注意されるなんて、みっともないじゃないの。気をつけなさい」と言った。チョコレートを中断して靴ひもを結んだ。
結び終わってチョコレートを食べながら、江ノ島の石段を登った。「♪いちごのチョコ いかが」と鼻歌を歌いながら。
そのようにぼくの人生に彩りを加えてきたチョコレートであるが、最近は個包装になってしまって、つまらないなと思っていたところ、近所の「つるかめ」というスーパーマーケットに昔のデザインの一枚ものの、板チョコが売られているのを発見して以来、何度となく買っているのである。
さっきも、99円で売られていたので3枚買ってきてしまった。
ああ、ぼくにとっては「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」も「ゴディバ」も明治のストロベリーチョコレートには敵わないのだ。
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チョコレートはひとカケ、口に入れるだけで、気分が落ち着きます。
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