2010年11月30日火曜日

●When We Was Fab 中嶋憲武

When We Was Fab

中嶋憲武


帰ってきてランちゃん(三毛猫)とかくれんぼ、キャッチボールなどして遊ぶ。ランちゃんは、かくれんぼのとき俺をみつけると得意げに、どや顔をする。こういうどや顔ならば、許す。

昨日はジョージ・ハリソンの命日だったので、朝からジョージのCD聴く。帰ってきてからも聴く。Wonderwall, LIVE IN JAPAN, GONE TROPPO, GEORGE HARRISON, Living in The Material World, BRAINWASHED, THIRTY THREE&1/3, CLOUD9, ALL THINGS MUST PASS, SOMEWHERE IN ENGLAND, DARK HORSE, EXTRA TEXTUREなどバラバラに聴く。GONE TROPPOなど松村雄策氏はけなしていたけれど、キュートでポップな曲ばかりで楽しい。

俳句をやっている人たちは、ビートルズをそれほど聴いてないような人までもジョン・レノンの命日の句はよく作るが、ジョージ・ハリスン誰それってなもんである。微苦笑するのみである。

ALL THINGS MUST PASSのOriginal Jam を聴いていると、ビートルズはジョージひとりでたくさんという気になってくるくらい、ジョージはビートルズっぽい。降参。


2010年11月29日月曜日

●今日は「いい肉」の日

今日は「いい肉」の日

ろくぐわつをあくせくと生き獣肉(ももんじい)  八田木枯

肉皿に秋の蜂くるロツヂかな  中村汀女

弁当の本質は肉運動会  宮本佳世乃

らあめんのひとひら肉の冬しんしん  石塚友二

十二月肉屋に立ちて男の背  正木浩一

ちちははの呼ばわり亡ぶ肉うどん  竹本健司


2010年11月28日日曜日

〔暮らしの歳時記〕初雪 山田露結

〔暮らしの歳時記〕
初雪

山田露結


名古屋から新幹線に乗り、東京駅で中央線に乗り換え、中野駅に到着。
さっそく、駅前の電話ボックスからYの家に電話をかけた。まだ携帯電話のない時代だ。

ところが、いくら電話をかけてみても何故かYの家にはつながらない。
番号の控えてあるメモを見直してもう一度かけ直してみる。
しかし、何度かけてもダメだった。

「Yさんのオタクですか?」

「いえ、違います。」

「そちらの番号は5×6×ですよね。間違いないですよね。」

「はい、間違いありません。」

「すみませんでした。」

「0」を「6」と書き間違えたかと思ってみたり、下一桁に違う数字を書いてしまったのかと思ってみたりして何件も何件も別の番号にかけてみたが、やはりYの家にはつながらなかった。

何時間くらい電話をかけ続けていただろうか。
せっかく東京まで出てきてこのまま帰るのか。
焦る気持ちを抑え、最後にもう一度だけメモにある番号にかけてみることにした。

「すみません、もう一度だけ確認させてください。そちらの番号は5×6×で間違いないですよね。」

「はい、間違いありません。」

「そうですか、すみませんでした。」

がっかりして受話器を降ろした。
テレフォンカードを吐き出して鳴る電話機のピーピーピーという音がむなしく響いた。

途方に暮れるとはこんな気分なんだろう。
あきらめて帰るか、それともどこかで一泊してYの電話番号を調べる方法を考えるか。
しかし、オレとYとの共通の友達はたぶん、今はもう東京にはいない。
いたとしても、やはり連絡先がわからない。

外はすでに暗くなりかけていた。
おまけに雪でも降り出しそうなどす黒い雲が空全体をおおっていた。
寒い。

オレは電話ボックスから出ようと回れ右をして、ガラスの扉を押し開けた。
すると、見覚えのある顔が電話ボックスの前を通り過ぎようとしていた。

「あれ?」

「おう!」

お互い、すぐに気が付いた。
Yだった。

「何だよー、連絡がないからもう来ないのかと思ったよー。おかしいなあと思ってさぁ、駅まで見に来たんだよ。」

Yはそう言いながら、ニコニコ笑ってオレの肩を抱き寄せた。
Yの煙草臭いダウンジャケットに抱き寄せられるとオレの目の奥から一気に熱いものが込み上げてきた。

「何だお前、泣いてるのか。しょーがねえなあ。」

Yはまだニコニコしている。

電話ボックスから何度も何度も電話をしていたことを話しながらYに番号の書いてあるメモを見せた。
どうやら、局番の最初の数字を書き間違えてしまっていたようだった。

「どうせそんなことだろうと思ったよ。あいかわらずバカだなあ。さ、飲みに行こうぜ、飲みに。」

オレたちは駅近くの居酒屋へ入るとすぐに熱燗を頼んだ。
その冬一番の冷え込みだという東京の夜空にはチラチラと初雪が舞いはじめていた。


うしろより初雪降れり夜の町  前田普羅

2010年11月27日土曜日

●パチンコ

パチンコ

パチンコに毒消売の立ちどまる  阿波野青畝

パチンコ店瀧の音なす終戦日  大木あまり

わが貌を映しパチンコ玉冷ゆる  藤田哲史


2010年11月26日金曜日

●コモエスタ三鬼24 凶兆

コモエスタ三鬼 Como estas? Sanki
第24回
凶兆

さいばら天気


昭和12年(1937年)は盧溝橋事件の年。その年のこの一句。

  兵隊がゆくまつ黒な汽車に乗り  三鬼

歴史的事実を抜きにしても不吉な響きをもつその理由は「まつ黒な」あたりにあるのでしょうか。〈兵隊がゆくくろがねの汽車に乗り〉ではまったく違った雰囲気の句になります。

三鬼が戦争を直接詠んだのは、おそらくこの句が最初。〈機関銃熱キ蛇腹ヲ震ハスル〉に始まる「戦火想望」の連作「戦争」はこの句の2年後、昭和14年の作。

この句を読んで思ったのは、ユーリ・ノルシュテイン「話の話」に出てくる汽車の音のこと。



未見の方、パート1からどうぞ。必見のアニメです。


※承前のリンクは 貼りません。既存記事は記事下のラベル(タグ)「
コモエスタ三鬼」 をクリックしてご覧くだ さい。

2010年11月25日木曜日

●鯨



曳かれくる鯨笑つて楽器となる  三橋敏雄

ことごとく老いて鯨の煮ゆる昼  攝津幸彦

情事に似たりこもりて鯨煮ることよ  草間時彦

さらしくじら人類すでに黄昏れて  小澤 實

寝物語りに鯨の声の小さかり  大石雄鬼

気絶して千年氷る鯨かな  冨田拓也

2010年11月24日水曜日

●映画へゆくのさ 中嶋憲武

映画へゆくのさ 中嶋憲武


今日は映画を観に行った。

ゲゲゲの女房」。つまらなかった。監督は鈴木卓爾という脚本家でもあり俳優でもあるという才能を持て余しているような人。知らなかったので検索してみると、なんと、かの「うた魂♪」にも出ている。金町高校合唱団の顧問という役だ。どこに出てたのか、とんと思い出せない。

音楽が鈴木慶一さん。貸し本屋のおやじの役で出演もしている。ラストのテーマが、ムーンライダーズ。慶一さんが「♪ゲゲゲのゲったらゲゲゲのゲ~」という調子で歌う。これはよかった。

欲張ってもう一本観る。ほんのお口直しのつもりであった。

ノーウェアボーイ」。つまらなかった。かのジョン・レノンがビートルズになる前の物語という触れ込みであったが、物語の年代を考えるとシルバービートルズとして活動を始めたころまでの物語ではないだろうか。つまり1956年頃から1960年頃までの話と思える。撮影期間が短かったと見えて、初秋から晩秋の風景が美しい。どう考えても4年間くらいの話であるが、秋に全部撮っている。服装もあまり変らない。潔い。

そこへ行くと、「ゲゲゲ」は予算も撮影期間も少なかったと見えて全シーン冬の撮影であるにも関わらず、さむざむとした風景の中で、夏を現すために出演者が半袖、ノースリーブなどを着用に及んでいる。変。それに昭和30年代の話なのに、現在の東京駅と現在の調布駅前などが出て来る。出演者は昭和30年代のコスチュームで、周囲の通行人は現代の服装。変。このふたつのシーンはストーリー上、さほど必要なシーンとも思えない。

朝、雨が降っていたので映画を観たい気持ちになった。
♪今日はひどいから
 雨もひどいから
 映画へゆくのさ
てなもんである。


「ゲゲゲの女房」⇒公式サイト
「ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ」⇒公式サイト

2010年11月23日火曜日

●労働

労働

月見草勤労の歩のかく重く  竹下しづの女

鋼鉄の昼の暗さを働く頸  鈴木六林男

労働歌蚯蚓うるほひ身を進む  津田清子

労働祭赤旗巻かれ棒赤し  三橋敏雄

2010年11月22日月曜日

●尻



学問は尻からぬけるほたる哉  蕪村

湯上りの尻にべつたり菖蒲哉  一茶

尻据ゑし厠の屋根の瓢かな  青嵐

貝掘りの尻を数へん豊後灘  飴山 實

朝日あり童貞の尻固すぼみ  金子兜太

一行の詩があり朱夏の豚の尻  高野ムツオ

尻さむし街は勝手にクリスマス  仙田洋子


2010年11月21日日曜日

●帽子

帽子

炬燵にて帽子あれこれ被りみる  波多野爽波

草も生えぬ島に忘れてきた帽子  橋 閒石

三島忌の帽子の中のうどんかな  攝津幸彦

2010年11月20日土曜日

●カーテン

カーテン

カーテンの隙一寸の初明り  瀧 春一

カーテンの波うちぎはへ春の雪  生駒大祐

カーテンの折り目の固き帰省かな  岡本飛び地

カーテン吹かれ虫籠に届かざる  藤田哲史

どの窓もカーテン吹かれ卒業す  榮 猿丸

カーテンのはさまつてゐる扉かな  山口東人

2010年11月19日金曜日

●ラジオ

ラジオ

手まくらにラヂオ快調蝿うまる  飯田蛇笏

歯車になつた心地で聞くラジオ  相原左義長

雪降るとラジオが告げている酒場  清水哲男

父の思想の櫻の国のラヂオ商  攝津幸彦

ブエノスアイレス遠いラジオに降り積む雪  長谷川裕


2010年11月18日木曜日

〔暮らしの歳時記〕初しぐれ 山田露結

〔暮らしの歳時記〕
初しぐれ

山田露結


「ゴムしてるのにイク前に抜くの?」
ユカリが少し不思議そうな顔で言った。
「え?だって、万が一ってこともあるだろ。」
オレがそう答えるとユカリは
「ふーん、優しいんだ。」
そう言って、ティッシュペーパーを三枚ほど抜いてオレに渡した。
「何だよそれ。どういう意味?」
オレは苦笑いしながら言った。
「だって、私のこと人間扱いしてくれてるんだって思って。」
「だから、何だよそれ。」
ユカリは何も言わずに俺の腕にそっと抱きついてきた。
「どうしたの?」
「ううん、うれしいの。」
そのとき、ユカリは少し涙ぐんでいるようにも思えた。
外は雨らしく、かすかな雨音を窓越しに聞いていた。

初しぐれ今日菴のぬるゝほど  高井几董

2010年11月17日水曜日

●運河

運河

花種買ふ運河かがよひをりしかば  石田波郷

草摘に光り輝く運河かな  川端茅舎

裁判や冬の運河に花流れ  島津 亮

夾竹桃運河一本鉄のごと  永方裕子

行春や機械孔雀の眼に運河  中村安伸



2010年11月15日月曜日

●電車

電車

電車行くそばに祭の町すこし  高浜虚子

手のアネモネ闇ばかりゆく灯の電車  中村草田男

日脚伸ぶ電車の中を人歩き  神蔵 器

百年後のいま真白な電車がくる  小川双々子

アフリカ飢餓ここに電車に藻のように  高野ムツオ

葉桜の頃の電車は突つ走る  波多野爽波

春昼の廊下のごとき電車かな  仁平勝

天道蟲宵の電車の明るくて  田中裕明

桃咲くやこの世のものとして電車  山口優夢


2010年11月14日日曜日

●九官鳥

九官鳥

紙漉いて九官鳥も可愛いがり  京極杞陽

眼の澄める九官鳥に日除かな  大木あまり

九官鳥同士は無口うららけし  望月 周

2010年11月13日土曜日

●地球

地球


地球凍てぬ月光之を照しけり  高浜虚子

マリが住む地球に原爆などあるな  渡辺白泉

家毎に地球の人や天の川  三橋敏雄

金色に茗荷汁澄む地球かな  永田耕衣

煩悩も地球も古き秋の暮  攝津幸彦

蝌蚪滅ぶのち満水の地球かな  仁平勝

ハッピーニューイヤーレタスのごとき地球浮き  和田耕三郎

湯たんぽの地球に落ちておりにけり  五島高資

手花火の君は地球の女なり  高山れおな


2010年11月12日金曜日

〔人名さん〕半開き

〔人名さん〕
半開き


紅葉散るモンローの口半開き  鳥居真里子



2010年11月11日木曜日

●荻窪

荻窪

昼顔のここ荻窪は終の地か  角川源義

さやうなら笑窪荻窪とろろそば  攝津幸彦

荻窪に茣蓙屋があればこそ涼し  筑紫磐井

荻窪や屋根のあはれの桐の花  永島靖子

2010年11月10日水曜日

●目玉焼

目玉焼

吾が英語通じて春の目玉焼  鈴木鷹夫

ひとりなれば法然忌にも目玉焼  星野麥丘人

新緑に置き完璧な目玉焼  小久保佳世子

冬晴や醤油をはじく目玉焼  彌榮浩樹




2010年11月9日火曜日

〔人名さん〕木葉髪

〔人名さん〕
木葉髪


木葉髪あはれゲーリークーパーも  京極杞陽

ゲーリー・クーパー1901年5月7日生まれ。京極杞陽1908年2月20日生まれ。7つ年長でゲーリークーパーは京極杞陽のお兄さん世代。木葉髪は、自分の近未来でもあろう。

(さいばら天気)

2010年11月8日月曜日

●熊本電停めぐり08 新町 中山宙虫

熊本電停めぐり 第8回 洗馬橋(せんばばし)

中山宙虫

3号線上熊本駅前~健軍町の8番目の電停。
上熊本から所要時間10分。

10月27日(水)
16時。
所用で仕事を休む。
その帰りにやってきた。
専用軌道を抜けて出てくる電停がここ「洗馬橋」。










ここは、あの童謡「あんたがたどこさ」の舞台とされているところ。
正式には「肥後手毬唄」というそうで、全国的に知られているまりつき唄。
そんなわけで周辺には狸の像があちこち。







郵便局のポスト。










画材店にも。










もちろん電停にも。
この狸の像「ふれあい親子狸」には御利益がありそうな看板も。


そして、電停の名になっている橋にも。










しかし、よく見てみるとこの橋の反対側には、へんてこな海老が乗っている。
「あんたがたどこさ」に海老が出てくるらしい。
記憶をたぐってみると、そのような気がする。
船場橋の案内板のうえのへんてこな格好をしているのが海老。












歌詞をたぐってみると。
♪あんたがたどこさ 肥後さ 肥後どこさ 肥後どこさ 熊本さ 熊本どこさ 船場さ 船場山には狸がおってさ それを猟師が鉄砲で撃ってさ 煮てさ 焼いてさ 食ってさ それを木の葉でちょいと隠せ♪
狸が出てくる。
これにあわせて女の子たちはまりをついた。
「ちょいと隠せ」でまりを背面キャッチしていた記憶がある。
スカートの時代はスカートのなかに隠してフィニッシュもあったような話だ。
さて、えびはどうなのか?
もうひとつの歌詞。
♪あんたがたどこさ どこさ 肥後さ 肥後どこさ 熊本さ 熊本どこさ 船場さ 船場川にはえびさがおってさ それを漁師が網さでとってさ 煮てさ 焼いてさ 食ってさ♪
えびが出てくる。
こういう歌詞があったのだ。
ところで、この唄は埼玉県川越が発祥とする説がある。
考えてみれば、熊本にいて、「あんたがたどこさ?」と問われ、「肥後・熊本」と答えるのも変な話。
旅先で、問われ答えた話とすればわからなくもない。
真相は狸と一緒に藪のなかでいいか。
それに橋の名は「船場橋」と明記されている。
昔、このあたりが船着き場だったようで、この名がついたという。
電停の名は「洗馬橋」。
船着き場で荷を運ぶ馬を洗ったからなのだろうか?
もうひとつ、船場橋が渡る川は「坪井川」。
船場川はない。
ましてや、山があるような場所ではない。
船場山はどこだったのだろうか?
案内板には藪だったという記述があるが、今はもうすっかり市街化してしまって、狸の住める場所はない。
電車はこの「船場橋」を渡って、熊本市の中心部へ。
ここまでは、古い街並みが続いていたが、随分にぎやかになっていく。
電車がきた。
右側の電車が「建軍町」行き。


橋を渡るとき気づいたことがある。
熊本城が見える。
ほんの一瞬だが。
この路線でここがまず最初に熊本城の天守閣を見ることができる場所だったのだ。
坪井川に沿った熊本城の石垣。
手前は、今は県立高校が建っている。
この石垣にひょっとして狸は棲んでいるのかもしれない。
そう思う。


次回の電停は「西辛島町」。

2010年11月7日日曜日

●窓



江戸住や二階の窓の初幟  一茶

夕顔や酔てかほ出す窓の穴  芭蕉

窓の燈の草にうつるや虫の声  正岡子規

雪隠の窓から見るや秋の山  夏目漱石

玻璃窓に来て大きさや春の雪  高浜虚子

窓にすぐひろがる港金魚玉  木下夕爾

日のあたる窓の障子や福寿草  永井荷風

窓々の灯のおちつきのすでに冬  久保田万太郎

しやぼん玉窓なき厦の壁のぼる  橋本多佳子

王(ワン)氏の窓旗日の街がどんよりと  西東三鬼

ジプシーに占はせをり窓の春  高野素十

窓あけて虻を追ひ出す野のうねり  富澤赤黄男

窓も句集も四角なりけり暑気中り  池田澄子

火事跡に焼けのこりたる窓のあり  藺草慶子

万緑も窓も無傷と思ふなり  櫂未知子

花町の窓なり魚の飛ぶひかり  宇多喜代子

初夏に開く郵便切手ほどの窓  有馬朗人


2010年11月6日土曜日

●おんつぼ36 テッサの歌、灰色のワルツ、アデルの恋の物語 四ッ谷龍


おんつぼ36
テッサの歌、灰色のワルツ、アデルの恋の物語

四ッ谷 龍


おんつ ぼ=音楽のツボ




秋の雨が降りつづきます。
中庭の木が濡れてひかりをこぼしています。
景色を見ている私の心も、しとしとと雫していくようです。
こんな日は、窓辺に灯をともしてレコードに針を落としてみましょう。「テッサの歌」を聴くために。静かな悲しい曲です。雨だれがガラス窓を伝うのにつれて、音符も上から下へとしなだれていきます。
もし私が死んでも 鳥たちが囀りを止めるのは一晩だけ。
もし私が死んだら 別の人が現れ あなたはいつか私を忘れるでしょう。
そして生のよろこびがあなたの視線を
また洗い清めることでしょう。
朝 あなたは見るでしょう
山が明るみ 私の墓に幾千もの花がひらくのを。
私はいなくなり 美しきものはよみがえる。
私のただ一人の恋人よ!
作曲者のモーリス・ジョベールはフランス人。戦前、おもに映画音楽の分野で活躍した人です。『舞踏会の手帖』の主題曲「灰色のワルツ」は、曲を後ろから前に向けて演奏し、レコードを逆回転させて再生するという、前衛的な手法を駆使したユニークなワルツとして有名です。
第二次世界大戦が起きるとジョベールは軍隊に志願しますが、1940年に戦場で銃弾を受けて死去してしまいます。40歳でした。
戦後になると、ジョベールの名は忘れられていきました。しかし彼の音楽を大事に思っている、ひとりの映画監督がいました。フランソワ・トリュフォーです。彼は、「映画に合わせて音楽を付けていく」のではなく、「ジョベールの音楽に合わせて映画を撮る」ことを思い立ちます。ジョベールのいくつかの音楽作品を選び、それに合うように画面を作っていこうとしたのでした。
こうして完成した映画が、ヴィクトル・ユゴーの娘アデルを主人公とした名作「アデルの恋の物語」です。
トリュフォーは、続く映画「緑色の部屋」でもジョベールの音楽を使用します。亡き妻のために礼拝堂を建立しようとする男についての映画です。完成した礼拝堂には、妻や大切な人たちの写真が飾られます。そこにはジョベールの肖像もあり、トリュフォー自身が演じる主人公は、作曲家について語ってみせるのです。

演奏者についてひとこと触れておきます。歌手のイレーネ・ヨアヒムは、名ヴァイオリニストのヨーゼフ・ヨアヒムの孫に当たります。(ヨーゼフはブラームスの若き日の親友でした)
ドビュッシーの歌曲を歌わせたら、彼女の右に出るものはいないでしょう。弱音が続く部分に熱い情熱を込めて表現することを得意とする、名歌手でした。

雨の日に似合う度 ★★★★★
いまどき共感されやすい度 ★★★



2010年11月5日金曜日

●ペンギン侍 第41回 かまちよしろう

連載漫画 ペンギン侍 第41回 かまちよしろう

前 回


つづく


【再・告知】
ペンギン侍でおなじみのジョーが、『早稲田OB漫』に出張出演!
かまちよしろう「沈思犬ジョー」(p135-)
豪華執筆陣によるこの本、週俳・ウラハイでおなじみの長谷川裕さん、上田信治さんも登場。

2010年11月4日木曜日

●誌上句会「福助」・選句一覧(4)

誌上句会「福助」・選句一覧(4)

選句一覧と作者です。句数が多いので、1日1題ずつ、4日間にわたって発表させていただきます。

誤記・漏れ等お気づきのときは、tenki.saibara@gmail.com まで。

感想その他なんでもコメント欄にどうぞ。≫コメントの書き込み方



【足袋・靴下・ストッキング・下着関連】  

替への足袋入れてすなはち旅の荷に  小川春休
■読者は「そうですか」としか言いようがない。(るる)
■芸人さん? 中原さんならそんな事も。(痾窮)

儚いとつぶやくことも夜の下着  sono
○沖らくだ
■詩的なんだか下世話なんだかよく分からないところが好き。(沖らくだ)
■諦念諦観、歳と共に不如意に。(痾窮)
■下着は儚い、下着を脱いで現れ出でた真のリアルをただ耐えよ。(知昭)

海からの霧シュミーズのような霧  天気
○信治○藤幹子
■白黒の怪談映画のような景。(信治)
■しっとりすべすべで少し冷たくてその奥は見通せない。素晴らしい。(藤幹子)
■悪くないが、リフレインが効いていない。「海からの霧シュミーズのごときかな」だったら採る。(るる)
■直喩の説明。(痾窮)
■薄い生地のような霧、との見立てはなかなか。(知昭)

靴下を重ねてまるめ露時雨  どんぐり
○中村遥○岡本雅哉
■〈露〉といえば儚さを思うが凛とした美しさもイメージする。靴下をきちんと重ねて丸めて畳む人の凛とした姿が目に浮かぶ。そしてその人の生き様まで伺えるよう。(中村遥)
■露時雨の中に帰ってくる人のために、 靴下をセットしてあげているのかな?(岡本雅哉)
■結果、原因。(痾窮)

秋風やドロワーズ穿く偽メイド  るる
○内田董一
■原因・結果か? しかし「偽メイド」という言葉、俳句にするなら今のうちでしょう。先を越されました。(内田董一)
■メイド喫茶、ご愁傷様。(痾窮)

ブリーフは履かずに蚯蚓鳴きにけり  知昭
○山田露結○真冬○廣島屋○痾窮○岡本雅哉
■パンツをはかない人がいる。学生だった頃(約20年前)、あるブティックのオーナー主催の忘年会(ブティック主催とは言っても普通の居酒屋の座敷だったが)に出席したところ、なんと甲本ヒロト氏が来ていた。歌ったり踊ったりと賑やかな宴会だったが、場が盛り上がってきたところで、誰かがヒロト氏に「ヒロトさん、パンツはかないって本当ですか。」と聞いた。するとヒロト氏は「はかないよ。」と言いながらジーンズのファスナーを下ろしたのだった。確かにはいていなかった。そこにいた全員がヒロト氏のありがたいものを拝ませていただいた。掲句の、ブリーフをはかない理由はよくわからないが、その意味不明な行為と「蚯蚓鳴く」という風変わりな季語との取り合わせが面白い。あれ?でもこれ、単なるエッチのあとの自虐的シモネタか?
■ブリーフこそ鳴く蚯蚓と類想される質感なのですね。季語の嘘を嘘にさせないように嘘をついています。(真冬)
■ブリーフは「履く」のではなく「穿く」のが正しいと思います。でも面白い。(廣島屋)
■ミミズにブリーフは無理。(痾窮)
■秋なのに、ブリーフを履いていないのは情事のあとか。 ブリーフに中年の哀愁が。(岡本雅哉)
■ブリーフを穿かずにGパンを穿いている感じか、それこそフルチンなのか。蚯蚓鳴くでどう繋がるのか、思いを巡らすのにはいいのですがちょっと遠 いでしょうか。(小早川忠義)

五本指ソックス左だけに穴  沖らくだ
○sono○埋図○小早川忠義○正則○風狂子
■五本指ソックス愛好者としては外せません。あれは穴が空きやすいのです。ただのソックスと違って左右がはっきりしています。先に穴が空く側は決まっています。納得の一句。(sono)
■右とか左とかはっきりしないのが靴下なのだが、そうとは行かないいやな奴がある。困ったものだ。国家賠償が嫌だとか、財政負担が嫌だとか、銭を何かに使いたいと思っている連中がそんなことばかり云うんだ。(埋図)
■左に重心がかかって擦り切れている靴下。それも五本指とは。仕事に真面目でちょっと癖のある姿勢の男なんかを思い浮かべます。一読してなんでも ないところが逆に興味を引きます。(小早川忠義)
■最近では、5本指の靴下も、作業用以外にもよく見かけるようになった。私の作業用の靴下も洗濯して穴が開くことがあり、これには右左があるのがよくいえている。(正則)
■実景にして色々な深みを感じさせる(風狂子)
■左側の靴下に穴があると云う内容では、五本指の靴下と云う設定に意味がない。指のところに穴がある、という内容にしたらいかが(るる)
■ま、そういうものです。(痾窮)

身分証明書入りTシャツ2月後悔する新年  埋図
■確かに大変。でも、報告を越えてほしい。(るる)
■不勉強につき読解不能。(痾窮)

足袋履いて辻中に木の実落ちたる  宮本佳世乃
○文香
■「たる」でわかる、しばし驚いたままの彼。彼の目は木の実のように丸く。(文香)
■「辻中」が解らない。(痾窮)
■「辻中」が妙味、そうそうこの言葉は出てきませんよ。(知昭)

ストッキング破らふ秋の虹すぐに消え  近恵
○痾窮○知昭
■あせりなさんなって!(痾窮)
■わざわざ「破らふ」と言うにはよほどの訳があるのか、それとも秋の虹が早々消えてしまっていらいらしてしまうのか。ストッキングも秋の虹も、どこかはかない。(知昭)

靴下の見得を切つたる村芝居  義知
○文香○鈴木不意○猫髭○中村遥○恵
■君の靴下にくぎ付け。靴下しか見えない。(文香)
■役者の足元を見たら足袋ではなくて普通の靴下だったという、まことしやかな句。でも村芝居なら許せる。(鈴木不意)
■村芝居だからこそ足袋を履くだろうから作り過ぎの感もあるが、どこにも粗忽者はいるのだろう。(猫髭)
■靴下が面白い。かわいい子供歌舞伎の役者を思う。(中村遥)
■足袋に替えるのを忘れちゃったんでしょうね。見てるこっちはもうそれに気がついたらそこばかり気になってしまう。可笑しいです(恵)
■「靴下を履いたまま」は「靴下の」に省略できない。(るる)
■時代劇で衣装をけちった。(痾窮)

銀杏もみぢ足袋に込めたる指ゆるぶ  文香
○宮本佳世乃
■ちょっとゆるんだ感じがいいと思います。(宮本佳世乃)
■私自身で言えば靴を履かない生活が続くと足指は成長します、足袋の方が伸びたのでしょう。(痾窮)

秋の夜のズロース踏んで帰りけり  山田露結
○小川春休○天気
■部屋の情景やその持ち主、持ち主と作中主体の関係性などなど、「ズロース」から連想がぐんぐん広がります。他の下着類にはないパワーが「ズロース」にはある。ズロースパワー。(小川春休)
■これ、相手はクロウトですね(天気)
■こういう、ロマンなき四畳半ちょんの間も、また良し。(藤幹子)
■洗濯物が落ちているのはあり得ること、でなければ事件。(痾窮)

高西風や絹の靴下たくし上げ  小早川忠義
■「や」切りの必然性が不明。(痾窮)

ランニングシャツ干してある秋桜  信治
■風景。(痾窮)

肉まんにふんどし遠く落葉掃く  真冬
○文香
■まさか、肉まんが何かのメタファーなはずがない。まさか。(文香)
■物ABCの自己主張強し。(痾窮)
■きりっとふんどし締めて、新蕎麦をさらりとすすりこむ、いやあ男の句だねえ。(知昭)

ストツキングはいて始まる愁思かな  中村遥
○風族○山田露結○鈴木不意○中塚健太
■おかまさんの句として戴きました。(風族)
■おそらく、ストッキングをはいているのは男性だろう。ストッキングの下にはパンツも何もはいていない。股間には網で救い上げたモズクのような盛り上がりが見える。この情けない男性の姿を言い止める季語は、やはり「愁思」なのだろう。(山田露結)
■朝の出勤の支度だろうか。普通に読めば朝のOLさんの憂いかな。これを、夜の出来事と深読みしたら、話は違ってくるのだが。(鈴木不意)
■出社前の景とすると、会社へ行くのイヤだなあと思いつつ、ストッキングを履いて戦闘モードに切り替わるという心理はよくありそうです。が、心底イヤな場合、行かなくちゃと思って起きたものの、何かの行為で、この場合ストッキングを履いたところで、急に辛くなるということもありそうに思います。(中塚健太)
■作中主体が男性なら当たり前。女性なら、読者に愁思の理由がわからない。(るる)
■敢えて無季にしたのか?朝より夜の不首尾な逢瀬の後のストッキング。(痾窮)

秋雲のあたり靴下干しにけり  中塚健太
○宮本佳世乃○義知
■こういう生活がしたいもんです。(宮本佳世乃)
■靴下を干そうとしたらその先に秋の空。雲に洗濯物をひっかけたよう。(義知)
■風景。飛行機雲にでも干してほしい。(痾窮)

前貼りの君ピースする夜食かな  藤幹子
○廣島屋○痾窮
■下着関連という兼題で「前貼り」とは……やられました。(廣島屋)
■「かな」止めは厭だけど。AVの撮影現場が見えるよう…(痾窮)
■「君」が男性なら、前貼りが取れてしまう事を心配した方が良い。食べている場合でない。女性なら、男性が襲ってくる事を心配した方が良い。魅力的な光景だが、公序良俗的に問題。(るる)
■スゴイ図柄だ。下着じゃないし^^;度胸に一票入れたいところですが、次点でスミマセン。(沖らくだ)

靴下を脱ぎ散らかして三島の忌  内田董一
○埋図○小早川忠義
■そう言えば、そんな名前の人がいた。大政奉還とか云って、天皇を担ぎ出したのもいたが、アメリカ政治家も、天皇を利用したっけ。それを三回も持ち出したなんて信じられるか。まるで靴下を履き替えるようにだ。でも思い出すなあ、中学生の時、天皇に手紙を出したいと思いたった。宛て先が分からんから、担任の教師に聞いたが、知らないようだった。いや、校長まで出て来て、どんなことを書くのかと言う。天皇になるのはどうしたらいいか直接聞きたいと正直に云った。呆れたという顔で、勉強が足らんぞと云われ、諦めた。世襲じゃんか。担ぐしかないじゃんか。(埋図)
■憂国忌であるならば、講堂に集団で正座しながら黙祷をといったところでしょうか。我先に並ぼうとして脱ぎ散らかされた靴下の先にはこの上ない静寂が。(小早川忠義)
■自刃する時は靴はそろえる、靴下も。(痾窮)

菊月のガーターベルト爆ぜにけり  猫髭
○真冬
■菊月が効いて「太ったので爆ぜた」という線が和らぎます。駆逐艦「菊月」を遠望してしまいました。(真冬)
■はぜる、が肉感的で好きです。(藤幹子)
■なぜ菊月?(るる)
■馬も女も肥える秋。(痾窮)

靴下の片われさらば雁渡し  風族
○義知
■靴下の形が雁行の鉤型に似るか。(義知)
■季語との関連理解不能。(痾窮)

下着まで取替え本家の墓参り  正則
○風族○岡本雅哉
■こういう嘘は好きです。(風族)
■下着まで取り替えるのは奥さんか。 本家と分家の相容れなさ、よそよそしさを感じました。(岡本雅哉)
■なかなか良い句。知りたくない内容だが、面白い。(るる)
■「本家の」で無くても良い事も悪い事も何時何が有るか解らないので外出時の下着は…(痾窮)

十六夜の軍足干され足二本  鈴木不意
■3本なら怪奇、1本なら痛ましい、2本で結構。(痾窮)

新蕎麦や六尺締めてゐるといふ  廣島屋
○内田董一○真冬○藤幹子○どんぐり○恵
■季語と六尺は近いかも? しかし下五で伝聞にしたことで、ソバも褌も句そのものも、のびてしまったような、面白いイメージが生まれていました。(内田董一)
■「といふ」が作者とふんどし男子との距離をささやき、その実感を新蕎麦がほどよく湿らせています。(真冬)
■ちょっと驚きが感じられるのが良いです。蕎麦屋という舞台も効いている(藤幹子)
■職人はこれでなくちゃあ。(どんぐり)
■そんなどうでもいい情報いらないとか思いながらも話を広げて盛り上がってしまう、そんな蕎麦屋でのワンシーン。ネタとして面白すぎです(恵)
■「六尺締めてゐるといふ」が巧い。(るる)
■「新蕎麦」なので、かくしゃくとしたお爺さんを連想しました。蕎麦屋の常連なら、こういう人いそう。(沖らくだ)
■蕎麦を喰いながらの話題としては不適切か?(痾窮)

行く秋のパンツの内のわだかまり  痾窮
○信治○sono○沖らくだ○小川春休○風狂子
■「行く秋」が動かないw(信治)
■「わだかまり」とはパンツに仕舞われているもの、ということを学ばせていただきました。(sono)
■なんというか…^^;笑ってしまったので一票。いつでもありそうで、やっぱり「行く秋」だからこそ「わだかまり」なのかも、と妙な納得。(沖らくだ)
■パンツの内のわだかまりは、性や排泄、あと病、などなど様々なものを思わせます。程よい生々しさに好感を持ちました。(小川春休)
■冬に向かうアンニュイな感じを絶妙に表現(風狂子)
■季語の斡旋により、生理現象が起こす喪失感とフラストレーションがうまく出ている。ただ、「よくわかります」以上の反応を期待できない。(るる)
■これ、女の子の作品だったら魂消ますが、「内」より「中」ってやった方がとことん下品になって良かった気がします。(小早川忠義)
■永遠の「わだかまり」。生きていくかぎり逃れられない「わだかまり」(天気)

 

ご参加のみなさま、ご観覧のみなさま、お疲れさまでございました。ご参加のみなさまには、選句要領等、ご協力いただき、ありがとうございました。

また、時機を見て、やりましょうか。誌上句会。(当番・天気)


2010年11月3日水曜日

●誌上句会「福助」・選句一覧(3)

誌上句会「福助」・選句一覧(3)

選句一覧と作者です。句数が多いので、1日1題ずつ、4日間にわたって発表させていただきます。

誤記・漏れ等お気づきのときは、tenki.saibara@gmail.com まで。

感想その他なんでもコメント欄にどうぞ。≫コメントの書き込み方



【上or下】  

「上を向いて歩かう」聞こゆそぞろ寒  廣島屋
○風狂子
■選曲が良い(風狂子)
■歌謡曲の幻聴句は類想の山。(るる)
■何故あの曲が全米1位に?(痾窮)

オートバイ事故皿の上の焼秋刀魚  内田董一
■そんなこと言っている場合でなく、救急車を。(るる)
■炎上悲惨な事故。(痾窮)

きよみづにこれは上田の足袋の秋  文香
○廣島屋○知昭
■まるでとってつけたような下五の「秋」には笑ってしまいました。そしてこの句の場合「上田」という名前が外せないような気がしてきました。(廣島屋)
■京の「きよみづ」に落ちているの「上田の足袋」。上田さんの足袋なのか、それとも信州上田の足袋なのか、とにもかくにも深まりゆく京の秋の風情にあふれた一句。(知昭)
■いいリズムなんだけど…(痾窮)

ふぐり来て高さ生まるる橋の上  真冬
○藤幹子
■ふぐりを意識してしまうお年頃ですね。(藤幹子)
■身長を測る器具と相似。<「ふぐり」は睾丸、陰嚢、きんたまの意の古語(hatena)>(痾窮)

ヘアスタイルなぜならば資本主義墓地下  埋図
■なぜだろう、なんとなくわかるようでわからない。(るる)
■読解不能。定型じゃないからではなく、です。(痾窮)
■「なぜならば」って「だって資本主義だから」と続く終わりなき禅問答。(知昭)

やや寒のトイレの蛇口上げをれば  どんぐり
■「トイレの蛇口」が乱暴な省略。(るる)
■若しかしてチン×コ?…私もう極寒。(痾窮)

以下同文ひるすぎ野分現れて  知昭
○るる○廣島屋○鈴木不意
■初五が面白いです。野分による広範囲に渡る被害を描いています。(るる)
■下五「現れて」はひらがなに開いた方が好みですが。(廣島屋)
■何が「以下同文」なのかは知らぬが、午後から野分という関係のなさに不思議な戸惑を覚えた。(鈴木不意)
■「現れて」?人の名前みたい。(痾窮)
■「ひるすぎ野分現れて以下同文」なら「階段を濡らして昼の来てゐたり 攝津幸彦」の本句取りとして頂く。(猫髭)

黄落や兄あちこちに土下座して  小早川忠義
○sono○正則○中塚健太○知昭
■こんな悲しい句は初体験。ほんとうに悲しい。(sono)
■私には兄はいないが、まじめな兄と、やんちゃな弟の姿が見える。(正則)
■肉親のことは心が痛みます。悲しいけどハラハラと涙のような黄落がせめてもの慰めということでしょうか。中七下五は虚構と推察しますが、上五の効果か、物語のように共感できました。(中塚健太)
■「土下座の兄」の姿はこの弟か妹にどう映るのか、ひたすら頭を下げ続けるのが情けないのか、自分たちのせいでと申し訳なく思うのか。「黄落」のわびしさで一句が引き立つ。(知昭)
■黄落というより、木の葉髪になりそう。(るる)
■弟の不始末で。(痾窮)

雅樂の荷解くや返り咲く下に  中村遥
■他の荷物でも成立してしまう句。(るる)
■読み切れない。(痾窮)

銀漢や上水道と下水道  山田露結
○内田董一○埋図○猫髭
■景の大きい、わかりやすい取り合わせ。乱暴なようで意外に繊細、潔さもあります。(内田董一)
■融資を頼む際、誰だって正門から行くバカはいない。誰かを頼んで護衛を前後に配置して、ちゃんと管径を調べた上で、貸し剥がしとかさせん様に手を打つさ。第三のルパンはちとまずったな。(埋図)
■観月時に酔って短冊回しをやると、空を見たら地べたを見ろという取り合わせで遊ぶ奴が必ず出てくる。誰が詠んだか忘れたが「名月や風呂の流るる下水道」というのがあった。「銀漢」は上・下水道の水音が聞こえるようで面白い。(猫髭)
■川崎展宏の「天の川水車は水をあげてこぼす」があれば十分。(るる)
■天の川と水道、そう見ると近すぎる。(痾窮)

行く秋の屋上に出る出口かな  信治
○宮本佳世乃○義知○るる○中塚健太○猫髭
■開放感と、ともにある一人のよろしさ。(宮本佳世乃)
■秋日和や秋晴れだと普通か。白色系の屋上への出口とその中の暗闇が冬。(義知)
■屋外に出られるようで、屋上にしか出られないところが面白いです。季語と合っています。(るる)
■「出る出口」は拙い言い方にも思えますが、平素の口語感覚がこの言い方の唯一無二性(今っぽさ)を支持。秋の空の遠さ、取り残される感覚を味わいました。(中塚健太)
■「天高し」で、屋上の出口に広がる空はやはり秋天だろうと納得する。デパートの屋上の小さな遊園地も見える。秀逸。(猫髭)
■回りくどい言い方。(痾窮)

蛇穴に上下左右がわからない  近恵
■上下は解る筈です。(痾窮)

秋のあまつぶあしたラの下の音  宮本佳世乃
○埋図
■まず音程を確認する。秋の発表会の日程も、確認する。そして今日は雨だが、あしたの天気もさらに確認する。ララ ラララの他にはソラソラ、ミラミラ、ドラドラとかやるだろが。(埋図)
■ソぉ、ですか。(痾窮)

秋の暮灯台下を浸しけり  中塚健太
○痾窮
■「灯台もと暗し」は海の灯台でなく室内の灯りの下らしい。「秋の暮」は一寸重いが。(痾窮)

松茸の誰が上様領収書  痾窮
○沖らくだ○中塚健太○岡本雅哉
■最高です!ドサクサ紛れになんという!こういう人が一人ぐらい職場にいて欲しい。経理担当の呆れた顔が見えるようです。(沖らくだ)
■複数人で誰が支払うか決まっていない場合、すごく複雑微妙な心理の交錯する場となります。まして松茸。思う以上に高かった?(笑)。「誰が上様」に座布団一枚!(中塚健太)
■松茸の(誰が上様)領収書、という構造でしょうか? 「オレが払うよ」、「いやオレが」、と領収書を取り合う姿が微笑ましい。(岡本雅哉)
■川柳。(るる)

上巻読了夜仕事とせる下巻かな  義知
■状況説明、俳句的小細工を!(痾窮)

福助のやうな上司でおでん鍋  天気
○真冬○小早川忠義○小川春休○正則○中村遥
■「上司と」ではなく「上司で」。この「で」のあしらいに惹かれたのです。(真冬)
■これまた頼りなく見える上司です。お辞儀ばかりしているように見えますか、そうですか。たまに折れることもあなたの身を守るために必要な時もあ るのです。お辞儀なんかしないでいられる仕事なら、あなたと一緒にてっちりなどを突付けるくらいになれるのでしょうか。おでんだっていいじゃない ですか。温かいのに変わりは無いわけですし。(小早川忠義)
■おっさんなのにベイビーフェイスでおちょぼ口、いつもにこやかで無口、気の利いたことを言う訳でもないのに場を和やかにしてしまう、そんな福助係長、良いですね! 最初「で」が無造作な感じがして気がなっていたのですが、二読三読するうちに気にならなくなりました。これも福助係長の御利益か。(小川春休)
■会社ではよくあると思う。(正則)
■こんな上司はいいなあ。おでん鍋がぴったりと当てはまる。只、〈で〉が気になった。型に収まり過ぎるかも知れないが〈や〉ですっきり切った方が理屈っぽくなくて私はいいと思うのですが。(中村遥)
■どのように福助に似ているのでしょう。容貌、性格、ご利益?(るる)
■円満な関係のようで、呑むのも上司とではサラリーマンも大変。(痾窮)

上手より吹かれてきたる紅葉かな  鈴木不意
○信治○痾窮
■ぱっと、その場が「舞台」に。(信治)
■ぼろ芝居小屋、桜吹雪のはずが紅葉。(痾窮)
■舞台の紙の紅葉なのか、木々と木々のあいだを舞台と見立てたのか、ふたつの読みが同時に訪れる。いただきたかった句(天気)

上人のすぐには泣かず秋の蝉  知昭
○小川春休
■「すぐには」ということは、泣きやすい人たちが落ち着いてきた頃にほろり、と来る訳ですね。ありがたやありがたや。ただ、「泣く」で「蝉」はちょっと利がつく気もします。もったいなや。(小川春休)
■「鳴かず」じゃないから泣くのは上人?高僧ふ~ん。(痾窮)

上野から下谷界隈まで月夜  sono
○宮本佳世乃○山田露結○沖らくだ○正則○猫髭○恵
■界隈、で成功ですね。(宮本佳世乃)
■「上野から下谷界隈」に月夜を限定しているところがミソ。「界隈」がいい。もちろんその他の場所に月が出ていないわけではない。その夜の作者の行動範囲を言っているのである。(山田露結)
■きれい。イイひととそぞろ歩きたい。(沖らくだ)
■上、下の使い方がいい。(正則)
■江戸の下谷根岸界隈に住んでいた鵬斎・詩仏・五山・南畝・文晁・抱一・米庵らを偲ばせる粋筋の佳句。(猫髭)
■本当はもっと遠くも月夜に決まっているのに、自分の今いるあたりが月夜だというこの狭い世界がいい(恵)
■月夜はその区間以外にも見えるはず。自分が月夜にその区間を歩いたのだとすれば、推敲の余地あり。(るる)
■本人が移動しているわけです。(痾窮)

星月夜見上げて靴の踏める星  るる
■コンバースも★だけど、靴は「月星」と。(痾窮)

天高しカリカリ揚る上天丼  風族
○どんぐり○痾窮○中村遥
■美味しそう(どんぐり)
■食欲の秋。(痾窮)
■美味しそう。上天丼ですからね。大気が澄み空が高く感じられる趣の季語〈天高し〉との取り合わせが上手い。只、〈天高し〉〈天丼〉の〈天〉、〈天高し〉の高いと〈上天丼〉の値段が高いは意識的?偶然? 偶然であってほしい。また、〈カリカリ〉は常套かと。(中村遥)

年下の上司に苦言そぞろ寒  正則
○風族○義知
■そぞろ寒に実感があります。(風族)
■他人事じゃないなと。(義知)
■わかる内容だが、こういう寒さは超季。「そぞろ寒」の本意と違う。(るる)
■季語にくっ付き過ぎかな。(痾窮)

箱根路を下に下にと鰯雲  猫髭
○小早川忠義
■鰯雲が、毛槍に見えたのでしょう。鰯雲を見て横に逸れて平伏するということは無いけれど、ロマンチックに感じましたので。(小早川忠義)
■下り坂で下を向いていたら、鰯雲は見えない。(るる)
■鰯雲を大名行列と見る。箱根があるから突飛でも無い。(痾窮)

福助が下に見てゐるおでん屋内  小川春休
■風景として解るから「内」は不要、「下に見ている」は一寸変。(痾窮)

蓑虫や下校下駄箱下衆な唄  藤幹子
○どんぐり○風狂子
■下駄箱の埃と汗の匂いも(どんぐり)
■全句中、最も気持ちのイイ韻律(風狂子)
■蓑虫で意味性が強くなってしまったような。(宮本佳世乃)
■楽しい句ですが、季語が付き過ぎかも。(るる)
■ゲスな唄に蓑虫は聴きたくない聴きたくない、と。(痾窮)

夜学子や下敷きおけば消える色  沖らくだ
○風族○山田露結○鈴木不意
■夜学子まで消えてしまいそう。(風族)
■半透明のプラスティック製の下敷きだろうか。「下敷きおけば消える色」という小さな発見が夜学に励む静かな景を映し出している。
■書かれた文字の色、あるいは印刷してある大事な部分の色は、同じ色の透ける下敷きをあてると消えてしまう。大事な事って思い出せなかったり、見失うんだよなあと実感。(鈴木不意)
■「色の消え」や「色消えて」、「文字の消え」の方が広がりがあったかもしれません。ああ、あの頃が懐かしい。(小早川忠義)
■そういうからくり勉強具が有りました。(痾窮)

綺羅星の上から目線が癪くしゃみ  岡本雅哉
○sono
■「くしゃみ」がよいです。リアルです。「癪くしゃみ」の語呂とリズムもよいです。(sono)
■「上から目線」は使って欲しく無い日本語。(痾窮)

  

2010年11月2日火曜日

●誌上句会「福助」・選句一覧(2)

誌上句会「福助」・選句一覧(2)

選句一覧と作者です。句数が多いので、1日1題ずつ、4日間にわたって発表させていただきます。

誤記・漏れ等お気づきのときは、tenki.saibara@gmail.com まで。

感想その他なんでもコメント欄にどうぞ。≫コメントの書き込み方



【頭】  

ケチャップを吸ひつくしさて膝頭  真冬
○信治
■一分の隙もなく、へんな人である。なにが「さて」かw(信治)
■全然分からないんですが、気になってしょうがない句。(沖らくだ)
■ズボンに付けちゃった。(痾窮)

そぞろ寒頭痛到頭歯に到り  小川春休
○るる
■「到頭」が巧いです。(るる)
■頭痛も歯痛も「そぞろ寒」位なら大したことではない(痾窮)
■頭痛も歯痛もたまらない、それで寒いからもっとたまらない、実感の一句。(知昭)

ひよんの実や頭が高い頭が高すぎる  廣島屋
○信治○文香○藤幹子○鈴木不意○沖らくだ○天気○中塚健太
■錯乱している。(信治)
■二度目の「頭が」に心打たれました。図々しい。(文香)
■言い回しが面白い面白すぎる。(藤幹子)
■「頭が高い」で終わらせず、「頭が高すぎる」と高飛車に言い放ったのが良かった。「ひよん」の仮名表記も生きている。漢字にしたら重くなり野暮ったくなったろう。(鈴木不意)
■子どもの遊びの時代劇みたいに、罪がなくて、でも大仰な感じがあって、そこが滑稽。くり返しのダメ押しがいい。(沖らくだ)
■繰り返しの威力。季語は、まあ、どうでもいい感じでしょうか。でも「ひよんの実や」は、いいです(天気)
■ほんと、どうしてこうもついつい頭が高くなってしまうのか。自戒の念を呼び覚ます句です。(中塚健太)
■すみません。(宮本佳世乃)
http://blogs.yahoo.co.jp/biroochana/37718101.html写真でも初めて見ました。(痾窮)

福助の頭のなかのきつねうどん  天気
○sono○風族○宮本佳世乃○山田露結○知昭
■脳味噌の代わりとして「きつねうどん」は素敵だ。福助の頭を見たら、きつねうどんしか浮かばなくなる忘れられない句。(sono)
■意味不明だけど楽しい。(風族)
■骨をあけたらうどんが出てくる。うどんがちょっと脳みたいでおかしい。(宮本佳世乃)
■福助はそもそも茶屋や遊女屋などで祀られた福の神らしい。どこか神秘的な印象があるのはそのためか。あの大きな頭の中に何が詰まっているのか、たいへん興味深いところではある。「きつねうどん」と言われて「なるほど」とは思わないものの、何となくしっくりくるような、こないような。福助の神秘性からすれば当たり前のものが詰まっていては駄目なのだろう。(山田露結)
■頭を揺らすときつねうどんがたぷんたぷん・・・とするのか、この福助。帽子の中にうどんがあるという句があったが、脳がうどんというのはさすが福助というべきか。(知昭)
■あの姿勢のままでは腹もすく、きつねうどん6音がな~。(痾窮)

園丁の頭に落ちる青虫は  どんぐり
■園丁(えんてい)=庭師。そういうことも有るかと。(痾窮)

楽譜読む目頭はるかすすきはら  宮本佳世乃
■目頭=目の鼻に近い方の端、では変。(痾窮)

汗頭相談する外科医アダプター  埋図
■3物衝突?じゃないな<多汗症を診て貰う医者は社会との接続補助具>と、意味は通るが…(痾窮)

秋時雨ラムプの頭たァ黒帽よ  文香
■煤で黒く成って。(痾窮)

初嵐薄き頭の解説者  正則
○藤幹子○風狂子
■地肌をそよぐ残んの髪を激しく意識します。(藤幹子)
■問答無用で笑わせられた(風狂子)
■言ってやんなさんなっ、本人が誰より気にしてる筈。(痾窮)

大いなる頭とれたる案山子かな  るる
○義知○埋図○鈴木不意○小川春休○岡本雅哉
■案山子をそのままどうかすると言うのはありますが、「頭とれたる」が妙。(義知)
■雀等に少しはにらみを効かしたものだが、道路に警察官の看板とかパトカーの図があったりと人間にも多少は巾を効かせたもんだが、今は、すっかり見透かされてしまった。頭があっても、取れたとか大いなる取れとか云われっぱなしだ。(埋図)
■転がっている頭を想像すると、けっこう怖い。(鈴木不意)
■頭だけがアンバランスにデカかった案山子。その大頭が取れたときの印象の変わりよう、ヒョロヒョロした頭の無い案山子が目に浮かぶ。(小川春休)
■案山子は頭がすべて、ということに気付かされました。(岡本雅哉)
■頭が取れったって案山子は案山子、かもめはかもめ、人は屍。「大いなる」が非凡。(痾窮)

剃りたての頭に哀蚊のとまる月夜  風狂子
■定型に出来ると思う。「剃りたての頭に秋の蚊や月夜」破調季語2入り例。(痾窮)

天高し頭上注意を励行す  中塚健太
○小川春休○正則
■素朴な内容の句ですが、これぐらい素朴な方が、「天高し」という大らかな季語が生きてくるように思いました。(小川春休)
■工事現場では、注意を喚起するべく多くの看板が掛けられている、頭上注意もよく見かける看板で、近親感が湧く(正則)
■却って危険なのでは。(痾窮)

盗品に頭蓋骨一(いち)秋日濃し  内田董一
■まぬけなドロボーと言うか、思わぬ所で悪事がバレタと言うか。隠し財産を盗まれて脱税がバレタと言った風情。(痾窮)

燈火親し白頭だけとなつてをり  鈴木不意
○どんぐり
■残業は管理職ばかり。(どんぐり)
■能の?(痾窮)

頭から食べられてゆく羊かな  sono
○信治○山田露結○天気
■かわいいです。(信治)
■な、なんだ、これは!ローリング・ストーンズのアルバム『山羊の頭のスープ』 (Goats Head Soup)のジャケットには皿の上に盛り付けられた山羊の頭の写真が載っていたけれど、そういう類の料理だろうか。まさか、恐竜のような巨大生物が羊を食べているとは考えにくい。羊の列が建物か何かの陰に入っていく様子を描いたのか。しかも無季?この訳のわからなさに降参。(山田露結)
■食べちゃいますか。意表。すごい悪魔性を感じました(天気)
■ゲームのような世界。(宮本佳世乃)
■誰が(動物?)がどのように頭から羊を食べてゆくのかわからない。(るる)
■羊が1匹羊が2匹…(痾窮)

頭から生えてゐるなりケムール人  信治
○埋図○真冬○廣島屋
■ケムール人に昨日合った時、何で頭から映えて居るんだと云われて、面食らった。だって、その通りではないか。生まれたてのようにだ。いつものようにだ。(埋図)
■この文脈で言うと頭からケムール人が生えていて。ただならぬことです。(真冬)
■「ゐるなり」というあまりに冗長な措辞が気になりますが、やはりケムール人が。(廣島屋)
■ウルトラマン・ネタは面白いが、描写がわかりづらい。(るる)
■どんな状況かしらん、と小一時間はニヤニヤできます。上半身だけ斜めに突き出てるんだろうなあ(藤幹子)
■作者の頭からなら面白い。<ケムール人は、特撮テレビ番組『ウルトラQ』を始めとするウルトラシリーズに登場した架空の宇宙人。別名「誘拐怪人」。 体色は殆ど黒に近い濃紺で頭部が長く、その表面に亀裂のように走るラインから左右非対称の高さで各方面から三つの目が露出している(Wiki)>(痾窮)

頭より腹に落ち来る秋思かな  小早川忠義
■あざとい。類想あり。(るる)
■神経性胃炎と診断。(痾窮)

頭骨から尾骨まで蛇穴に入る  風族
○義知○真冬○小早川忠義○鈴木不意
■背骨を蛇に見立てた印象句。(義知)
■句を作るには対象をよく見て、といわれて、とてつもなくよく見てしまいました。(真冬)
■ヘビには、頭骨とか尾骨とかあったんでしたっけ。頭蓋骨や尾椎はあるでしょうけど。しかしながら説得力のあるところは発想の勝利のように思えま す。蛇穴に入る、ときたところで「頭の先からつま先まで」ではなしに骨に着目したのですから。(小早川忠義)
■X線によるレントゲン写真を見ている思いがする。おもしろい見方だ。(鈴木不意)
■そりや冬眠するのですから。(痾窮)

頭数足りずに広い三遊間  岡本雅哉
○正則○知昭
■私どもでも、少人数で句会を行うが、時に会場がことのほか人数より必要以上に広いときもある。実感があると思います。(正則)
■一打サヨナラ負けという場面で、外野手を内野に置くというシフトは見たことがありますが、この句は人数不足がありあり。チームの無事を祈る。(知昭)
■無季なのは良いが、広い理由を説明しては駄目。(るる)
■草野球は足りなくても構わずやっちゃうんですね。いないところは気力体力で補ってください^^;(沖らくだ)
■草野球では良くあること。(痾窮)

頭部抜け出てセーターてふ毛の塊   近恵
■巧いけど、あざとい感あり。類想あり。(るる)
■縮んだセーターからやっと首を出してこれも毛の塊と。(痾窮)

頭文字ひとつ花野に捨てにゆく  沖らくだ
○内田董一○どんぐり○中塚健太○猫髭
■おしゃれすぎる内容? でも、静かな雰囲気が好きでした。(内田董一)
■こんなはずじゃなかったのになあ。頭文字捨てたらきっと。(どんぐり)
■婚姻による改姓か、俳号を付けたのか、などとお名前のこととして読んでしまいました。喪失感とヒロイズムが、歳時記の世界に欧文文字が捨ててあるシュールな景に結晶。(中塚健太)
■何の頭文字を捨てに行くのかと想像させる作りが面白い。(猫髭)
■去って行った恋人の。(痾窮)

福助の夜霧へ垂らす頭蓋かな  藤幹子
○sono○恵
■これは忘れられた福助だと思う。哀愁の福助。(sono)
■おじぎ福助でしょうか。福助も夜霧で幻想的に(恵)
■夜霧と福助の照応。いただきたかった句。「こうべをたれる」という慣用句を呼び寄せてしまうところが難か(天気)
■夜霧よ今夜も有難う…。(痾窮)

豊年や首で支へてゐる頭  山田露結
○るる○文香○沖らくだ○小川春休○正則○恵
■当たり前の事に深い意味があると思わせる初五の季語が見事です。(るる)
■首までが体で、その本体。案山子とは言わないのが、巧み。(文香)
■確かに。当然っちゃ当然ですが、「豊年や」と置かれるとなんだか説得力があります。一票。(沖らくだ)
■「豊年」という季語には、収穫の豊かさと、万物への感謝が感じられます。重い頭を年中無休で支えている首にも、よくがんばったな、と一声かけてやりたいようなそんな気持ち。(小川春休)
■賄金スーツを新調し、ワイシャツも寸法取りした。肥満体?のせいか、首回りが大きかった。この句にはその哀愁感があるように感じた。(正則)
■当たり前のことなんだけど、そういわれるとドキッとする。豊年がどっしり感を与えている(恵)
■稲穂。(痾窮)

門扉閉ざして裏の畑の八つ頭  義知
○猫髭○岡本雅哉
■「八つ頭」の「つ」は不用。「門扉閉ざして」も冗長に詠む必然性は感じないが、八頭がぼこぼこ地中に蔓延るイメージが、今年は里芋が豊作だっただけに面白い。(猫髭)
■門の前から家の上を通り裏の畑に。 視点が俯瞰的に移動する気持よさ。(岡本雅哉)
■こっそり喰すわけですな。(痾窮)

野分して頭の内の吹きだまり  痾窮
○どんぐり
■吹きだまりのもやもや感がいいです(どんぐり)

林檎酢のたらりとかをる氷頭膾  猫髭
■美味しそう。報告で終わらせるなんてずるい。(るる)
■食べたことないんですが、これは美味そう。(沖らくだ)
■食べたことないからな~。<氷頭なます(ひずなます)は、北海道地方、青森県および岩手県の沿岸部、新潟県に伝わる郷土料理である。 氷頭とは鮭の鼻先の軟骨の部分のことを指す。氷のように透きとおっているためこのように呼ばれる。(Wiki)>(痾窮)

曼珠沙華ではおさまらぬ頭痛かな  知昭
○内田董一○廣島屋○中村遥
■ストレートな取り合わせではなく、因果関係の一句に仕立てています。それが成功していました。(内田董一)
■おさまらないだろうな、曼珠沙華では。と納得してしまったので。(廣島屋)
■曼珠沙華と頭痛の取り合わせ絶妙。只、曼珠沙華の赤は一層頭痛を増幅しそうな。(中村遥)
■神経毒なので民間療法は危険。歴史的に頭痛薬ネタの類想句多し。(るる)
■曼珠沙華は薬になるらしい。(痾窮)

曼珠沙華満開頭痛薬飲まな  中村遥
○風狂子
■彼岸花の赤い花が割れた頭蓋の中身を連想(風狂子)
■歴史的に頭痛薬ネタの類想句多し。(るる)
■これも曼珠沙華に薬効が有るとの(どんなか知らんけど)発想。(痾窮)

2010年11月1日月曜日

●誌上句会「福助」・選句一覧(1)

誌上句会「福助」・選句一覧(1)

お待たせいたしました。選句一覧と作者です。句数が多いので、1日1題ずつ、4日間にわたって発表させていただきます。

誤記・漏れ等お気づきのときは、tenki.saibara@gmail.com まで。

感想その他なんでもコメント欄にどうぞ。≫コメントの書き込み方



【福助】  

さんま定食福助の真ん前で  沖らくだ
○風族○義知○天気○中村遥○恵
■さばやかれいでなくてさんまであるところがいいと思います。(風族)
■ふと顔を上げると目の前に福助が、ずっと見られていたのですね。(義知)
■坐っているのはカウンター席でしょう。油まみれの福助人形(天気)
■海近い田舎の老夫婦が営んでいる定食屋、食堂、一膳飯屋を思う。福助の飾られている店とはそんな所を思ってしまう。(中村遥)
■解り易い位の昭和的食堂の一コマ。福助もすこし煤けているのでしょう。テレビでは漫才などやっていたりして(恵)
■「めし」と暖簾のある食堂風景、だから?(痾窮)

万歳や伸びる福助足袋である  sono
■そうね、綿素材の足袋は昔はのびず、窮屈な思いを。(痾窮)

福助の足のしびれを想ふ秋  痾窮
○るる○どんぐり○鈴木不意○小川春休
■頭の重みが足へ。秋思ですね。(るる)
■やさしい思いやりのような、(どんぐり)
■座り続ける福助の足が痺れないものかと考えないことはない。それをぬけぬけと言ったところが面白かった。(鈴木不意)
■下五「想ふ秋」が少し冗長かな、とも思いますが、「しびれ」という身体感覚で福助を捉えている点が良いです。(小川春休)
■言われて気がついた。作者は優しい人だなぁ。(沖らくだ)

福助はやはり耳から齧るべし  風族
○内田董一○るる○天気○痾窮○知昭
■じっくり考えた、というのではない、あっさり言い切った態度は良いです。(内田董一)
■ゲテモノ食いですが、応援したいです。(るる)
■食べちゃうんですか。意表です。あるいは鼠社会のルールを先輩鼠が後輩鼠に伝えているようにも読めます(天気)
■舐めるのなら月代(さかやき)だけど齧るのは耳。(痾窮)
■何ゆえ・・・と思ってしまった時点で、作者の術中にはまってしまいました。甘いからでしょうか、それとも苦味を味わうからでしょうか?(知昭)

福助にまなざしふたつ秋の虹  山田露結
○小早川忠義
■言っていることは何のことも無いのですが、共感。福助のその眼差しは強くもなく弱くもないまるで秋の虹のようなもの。福を呼ぶ人形の謂れは決して幸福なものではなかったと聞き及んでいます。(小早川忠義)
■福助を見ている「まなざし」でしょうね、お幸せに。(痾窮)
■当たり前のようにあるものこそ、はかなさを感じてやまない秋。(知昭)

浅黒い肌の福助出迎えるラーメン屋  風狂子
■「出迎える」は無くてOKなのでは?風景。(痾窮)

秋天の昭和に焼けた福助よ  鈴木不意
○藤幹子○正則○知昭○風狂子○恵
■福助に歴史あり。同じ時代を共有した福助への呼び掛けが哀愁。(藤幹子)
■昭和に焼けたという言い切りが良いと思った。(正則)
■「昭和に焼けた」となるとやはり空襲の焼け跡にぽつんと残された痛々しい福助の姿を思い浮かべてしまう。まさに国敗れて山河ありならぬ「国敗れて福助あり」。(知昭)
■先の大戦を偲ばせる(風狂子)
■解り易い位解りやすいが、昭和の色に焼けたというのは福助と招き猫ぐらいであろうかと(恵)
■こう詠まれると戦災に遇った福助が掘り起こされたという感じ。(痾窮)

福助をなでるゴト師や温め酒  藤幹子
○小早川忠義
■神を信じず自らの腕が全てと思われるゴト師も、幸せを運ぶものにはあやかりたいと思うのでしょうか。最後の「温め酒」が効いていると思います。 熱燗じゃ格好がつきません。(小早川忠義)
■とかくギャンブラーはゲンをかつぐもので…ゴトシは寧ろ詐欺師だけど。(痾窮)

福助の耳朶厚し豊の秋  正則
■福助の耳朶が厚いのは当然。(るる)
■福助の耳たぶの写実では…齧る位しないと句会で点は貰えません。(痾窮)

福助の横に桔梗が活けてある  天気
○信治○sono○風族○義知○山田露結○文香○小早川忠義○痾窮
■桔梗の紫とつむりの水色がきれい。「古い良い店」を描出。(信治)
■福助と活けてある桔梗は相性が抜群だということを示していて素晴らしい。薔薇とかチューリップとまで言わなくても、侘助でも女郎花でもダメ。(sono)
■桔梗とのミスマッチがいいと思いました。(風族)
■福助とこれは一輪挿しの桔梗でしょうか。特に壁掛けタイプのものだとなお良い。鄙の感じと色合いに○。(義知)
■あまりにもそのまんまの景。正直、いただこうかどうしようか迷ったのだが、あえて技巧を凝らさない技巧、という見方も。食堂の棚の上かどこかに置いてあるのだろう。福助のあの摩訶不思議な無表情と桔梗の紫色が何故か妙にマッチしている。(山田露結)
■ほっこり感。正統派の幸せ。(文香)
■その家はきっとがめつい仕事などをしないスマートな商家。その女将がある朝お客様の目に留まるように毎日の儲けを願掛けする福助の隣に桔梗を活けた。そんな状況まで浮かんできます。(小早川忠義)
■桔梗と言えば真っ先に明智光秀を想い浮かべる私、この2物ぶつかって?共通項は禿げ気味、対立項は円満vs悲壮。(痾窮)

前列の福助伏し目兜虫  内田董一
○埋図
■そう、この選句は福助大会の産物で、四句出しの八句選びと、人の句を選んで、福助八策を並べるというものだった。これらの我が八策は何の役にも立たない代物だが、並べて見れば、どうにも福助は、俺んじゃないと目を伏せる。兜太もこれが新作展なのかと呆れるしかなかろう。だが、云っておくが、我が福助八策以外の何者でもなかっぺ(埋図)
■正面から見るとチョンマゲとツノとは似ている…。(痾窮)

福助のお詫びの礼や風炉名残  小早川忠義
■「風炉名残」は私には使えない季語。福助のモデルは?との疑問↓成るほど叶わなかった…。<…文化元年頃から江戸で流行した福の神の人形叶福助。願いを叶えるとして茶屋や遊女屋などで祀られた。叶福助のモデルとなった人物も実在したと言われている。松浦清の『甲子夜話』にも登場する。当時の浮世絵にも叶福助の有掛絵が描かれ、そこには「ふ」のつく縁起物と共に「睦まじう夫婦仲よく見る品は不老富貴に叶う福助」と…(Wiki)>(痾窮)

熟れて白桃福助の頬めきぬ  近恵
○風族○文香○藤幹子
■なんとなく不気味で好きです。(風族)
■ホワイトの肌理にピンクの兆し。うまい。(文香)
■福助に血が通うようで。(藤幹子)
■「頬」ほほと読んでいいのかな?「ささ」めくとも。この2物共通項は「ふっくら」。(痾窮)

満月を出て福助のゐるところ  宮本佳世乃
○内田董一○どんぐり
■情景を放り出しています。説明が足りない。しかし、満月、福助、うまく嵌りました。(内田董一)
■何かいいことありそう(どんぐり)
■この2物も「ふっくら」。(痾窮)

福助の耳持つ人と温め酒  猫髭
○中村遥
■福耳の人と一緒に飲む温め酒はさぞ美味しいことでしょう。熱燗ではなく温め酒が叶っているかと。(中村遥)
■そういう人とのついあいは大切に、何時援助を頼む事になるかも。(痾窮)

福助の見てゐる暗き花野かな  信治
○るる○廣島屋○中塚健太○岡本雅哉
■本当は福助の目が暗くて、明るい花野を見ているはず。でも、福助には暗く見えているのでしょう。(るる)
■昔(たぶん10年以上前)「福助」というタイトルの舞台がありました。とても見たかったのに見ることができなかったので記憶に残っています。チラシに書いてあったか不明ですが、なんとも暗い笑いに満ちたお芝居のようなのでした。一読、景がばっと目に浮かんだのでいただきました。(廣島屋)
■そうか、あの目は暗い花野を見ていたのか。また美しくも寂しいものを見ていたのですね。福助の内面の凄まじさを垣間見せていただきました。(中塚健太)
■福助の笑顔に裏がありそう。(岡本雅哉)
■「暗き花野」意味深な形容。(痾窮)

福助のおでこに釣瓶落しかな  中村遥
○宮本佳世乃○るる
■いい意味での昭和。世間的、健康的。(宮本佳世乃)
■拳骨落しのパロディですね。(るる)
■季語をおちょくった。眉間の傷、旗本退屈男福助。(痾窮)

福助の始末第一ゐのこづち  義知
○真冬
■「ゐのこづち」を類推の梃に粘着力のようなものが引き出されていて、福助。(真冬)
■【牛膝】くっ付いて自ずから裕福に。 (痾窮)
■「第一」が自己主張し過ぎる。「始末に困る」ぐらいで「ゐのこづち」の取り合わせにいい味が出ると思うが。(猫髭)

秋空に福助顔といはれけり  廣島屋
○中村遥
■いいですねえ。福助顔とは。癒し顔なんでしょうね。(中村遥)
■病気でなきゃ、喰いすぎたんや。(痾窮)

ほんたうの福助のゐる菌山  文香
○宮本佳世乃○沖らくだ○天気○猫髭○知昭
■その福助が自覚しているだけなんだと思うような、ことばの面白さ。(宮本佳世乃)
■店にいるのはニセモノだったのか!菌山にいるというとぼけ方がおもしろい。(沖らくだ)
■きのこ好きとして立ち止まらざるを得ない。「菌」の妖しさが「ほんたうの福助」のなまなましさを際立たせる(天気)
■「モーニング」 に連載された漫画家伊藤静の鮮烈なデビュー作「福助」(2006年)を想起した。菌山に今なお隠棲する生きている福助のシュールなイメージは秀逸。間違っても福助を「松茸」だなどと土瓶蒸を想像してはいけない、こともないが、単なる見立てにする読みは勿体ない。(猫髭)
■じゃあいままでの福助は何だったのと言いたくなりますが、「菌山」で一句が締まりました。新しい、真の福助が茸のように続々と生まれようとしているかのよう。(知昭)
■福助でなくても句が成立してしまう。(るる)
■菌山=きのこやま、と読むのでしょう。なら、福助=松茸。(痾窮)

近未来都市の福助服透ける  岡本雅哉
○埋図○風狂子○恵
■今我々は昔近未来都市として設計された田舎にいるが、だれも居ないじゃないか。昔看板小僧だった福助も、今では、牛みたいになっちまって、ぎゅうっと透けちまった。もう。(埋図)
■きたる未来をユーモラスに(風狂子)
■近未来都市に福助は似合わないなあと思いきや、透ける服。「フクスケ」の繰返しが可笑しい。狙いに上手く嵌りました(恵)
■あんまり有難く無い、メタボ腹みせられるのは。(痾窮)
■「透け透けの服で福助未来都市」と落とさないと理が付き過ぎるのでは。(猫髭)

灰色・灰色の庭園通り純金福助  埋図
■配色は金銀細工風だが…解らない。(痾窮)
■冒頭の「灰色・」がくどいし、福助人形の歴史から言えば「金福助」が正しいが、イメージが面白い。(猫髭)

笑いたくなし十月の福助は  知昭
○sono
■笑いたくない気分と十月の福助が釣り合っています。(sono)
■私は年中笑いたいけど笑えないだけど。(痾窮)

棒を見せれば夜の福助棒を見る  真冬
○内田董一○文香○藤幹子○廣島屋○沖らくだ○天気○中塚健太○猫髭
■奇想が明確です。棒は棒、体温のある福助。(内田董一)
■福助さん、気をつけないと目をまわされちゃうよ。(文香)
■夜を良しととるかどうかでしょうね。私は好きです。棒も。(藤幹子)
■棒を見せれば・棒を見る、という繰り返しが何やら深い意味を持つようで、実は意味などないようで、最後まで悩みつつ、いただきました。(廣島屋)
■動くはずのない眼がちろっと動いたらちょっと怖い、でもやってみたい。(沖らくだ)
■「棒」と「夜」の茫漠感(天気)
■世界の全てに対して受け身で、かつ虚ろであるという福助の性質(性格?)が、棒という純一な物体を見せる実験によって証明されたような句だと思いました。(中塚健太)
■不気味で面白い。「棒を見せれば棒を見る夜の福助」と落とした方がわたくしは秀逸だと思う。(猫髭)
■福助って名前の猫?(痾窮)

福助を戻して冬の支度了  小川春休
○山田露結○真冬○岡本雅哉
■冬支度のついでに福助の置いてある棚も拭いたのだろう。冬支度が終わって福助はいつもの場所へ。やや「作ってる」っぽいわざとらしさは感じるのだが。(山田露結)
■では戻す前は何をしていたのか、福助。人間の都合に飲み込まれ居場所定まるのね、福助。(真冬)
■慣習としてのルーチンワークって美しい。(岡本雅哉)
■店先に在ったのを店内に、かな?簡単な冬支度。(痾窮)

福助の肩の重荷を解いてやる  中塚健太
○宮本佳世乃
■やさしい。(宮本佳世乃)
■さては、何か商売繁盛のアイデアが!?(痾窮)

福助の厚顔無恥に秋の色  るる
○信治
■「厚顔無恥」になるほど。(信治)
■そう言われれば流行ろうが閑古鳥が鳴こうが同じ表情。(痾窮)

福助の句会盛り上げ月天心  どんぐり
○天気
■句会当番として、ありがたくいただきます(天気)
■「週俳突発句会」です。(痾窮)