2011年6月24日金曜日

●金曜日の川柳 樋口由紀子


樋口由紀子
  







かの子には一平が居たながい雨


時実新子 (ときざね・しんこ) 1929~2007


雨が降り続くと気分が重くなる。洗濯物も乾かなくなり、家の中も心の中もじめじめとして、うっとうしくなる。うっとうしくなるとうっとうしいことが頭をよぎる。時実新子は「川柳界の与謝野晶子」と言われたが、新子自身は晶子よりスケールの大きい岡本かの子に憧れていた。そして、何よりも妻の才能を誰よりも認め、伸ばしてくれた岡本一平というが伴侶がいることが羨ましかった。かの子には一平がいた、それに比べて私はどうだろうか・・・。川柳はモノとモノとの関係性からではなく、モノやコトを自分との関わりの中に引き入れて一句にする。降りしきる雨を見ながら誰にあたるわけにもいかない。『月の子』(たいまつ社 1978年刊)所収。

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