相子智恵
生きてゐるうちは墓守草を引く 村上喜代子
句集『間紙』(2013.6 角川書店)より。
一読、その真理にハッとした句。先祖の墓地の雑草を取り除きながら、〈生きてゐるうちは〉亡き人の墓を守っていくのだ、自分は〈墓守〉なのだと思っている。
この〈生きてゐるうちは〉という限定が逆説的に、自分自身が死んだ後は墓守をしていた墓に入る側となる、という当たり前の事実をピシャリと突きつける。
「墓を守る人の行き着く先は、自分もその墓に入ることだ」というのは、非情な真理である。生きている間に自分ができるせめてものこと……それは雑草を心をこめて丁寧に取り除き、墓を保つことのみ。そして自分の死後はまた、誰かが自分の入った墓の〈墓守〉となり、草を引くのである。その順繰りに進む“生死の順番”を静かに考えさせる句である。
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