2013年7月1日月曜日

●月曜日の一句〔村上喜代子〕相子智恵

 
相子智恵







生きてゐるうちは墓守草を引く  村上喜代子

句集『間紙』(2013.6 角川書店)より。

一読、その真理にハッとした句。先祖の墓地の雑草を取り除きながら、〈生きてゐるうちは〉亡き人の墓を守っていくのだ、自分は〈墓守〉なのだと思っている。

この〈生きてゐるうちは〉という限定が逆説的に、自分自身が死んだ後は墓守をしていた墓に入る側となる、という当たり前の事実をピシャリと突きつける。

「墓を守る人の行き着く先は、自分もその墓に入ることだ」というのは、非情な真理である。生きている間に自分ができるせめてものこと……それは雑草を心をこめて丁寧に取り除き、墓を保つことのみ。そして自分の死後はまた、誰かが自分の入った墓の〈墓守〉となり、草を引くのである。その順繰りに進む“生死の順番”を静かに考えさせる句である。

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