樋口由紀子
仏蘭西の熟成しきった地図である
飯島章友 (いいじま・あきとも) 1971~
地図を長いこと見ていない。子どもの頃は目的もなく、なんとなく、地図を見て、勝手にわくわくしていた。宝探しの地図なんか作って、遊んでもいた。地図には夢があった。気持ちがどこかに飛んでいっていた。
「熟成しきった」とはどんな地図だろう。なんとも意味深であり、奇妙な感覚を読み手に残す。その地図が何を表しているのか。どこにあり、誰が見ているのか、これは情景なのか状況なのか、あれこれ想像させる。切り取りのセンスがいいから、言葉が確実に働きかけてくる。
一句の中に問答があり、定番のオチがある定番の川柳とは異なるが、これも川柳の一つのかたちである。前句を考えてみるのもおもしろい。〈寝坊したロックスターのでんぐり返し〉〈コーラひとくちアムトラックが走り出す〉 「川柳カード」6号(2014年7月刊)収録。
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