樋口由紀子
雪降れば雪雨降れば雨に濡れ
中野懐窓 (なかの・かいそう) 1896~1976
一読したときはあたりまえだと思った。だが、なぜか素通りできないものを感じた。「濡れ」のせいかもしれない。降ってくる雪や雨をただ見ているのではない。濡れないようにすることだってできる。が、「濡れ」るのだ。雨や雪に濡れると冷たくてひんやりする。その感触を思い起こす。
受け入れることの大切さ、それを甘受することの寛容さを言いたいのだろうか。生きていくというのはこういうことの連続である。雪が降らなければ雪に濡れないし、雨が降らなければ雨には濡れることはない。前提となるものが必ず存在する。自然の摂理にまかすことなのか。堂々巡りしながら、読みにかなり迷走した。結局は「ただごと」のよさなのかもしれない。〈能面の誰かに似てて無表情〉〈父と子の寝物語に父の無能〉
●
0 件のコメント:
コメントを投稿