Luminomusica Yakeinia
(ルミノムジーカ・ヤケイニア)
小津夜景
【みみず・ぶっくす 23】
Luminomusica Yakeinia
(ルミノムジーカ・ヤケイニア) 小津夜景
さいきん陽と風が強くて
いろんなものが乾いてきました。
灰のやうな光が外に降つてゐる。
光はさまよへる灰
ラリー・シモンの回想
それは昔
タルホといふ生涯老人の顔をして
生きた者の語つた回想なのですが
彼はその思ひ出を映像として語り
私の全然気に入らなかつた。
私にとつて
思ひ出とは光と音楽。
光の正体は海で
陽のさす窓は私の眼
風は管楽
眠りはぷろぺら
おほぞらは孤絶
それなら
そこをとぶ私は
なんだらう。
あ、さうか
それが思ひ出だ。
まぼろしはぼろきれのやう南風
骨盤をひらけば森のレエスかな
刳りぬいてゼリーは骸さう思ふ
クリスタルボンボンといふまほろばよ
青嵐参るバラライカを抱いて
蝉時雨のがれて来しと木は言へり
樹々に乗るおばけみな羅を翻し
タルホニアあなたは星をつくる人
かたつむり乾いた灰はいつもさう
天空を舞ふ真裸が多すぎる
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