樋口由紀子
雨滴の音が宇宙へつっ走り
森東魚 (もり・とうぎょ) 1889~1945
雨が続くとうっとうしくなり、心は晴れない。しかし、作者は雨滴の音に独自の見方をした。雨滴の音は聞く人の心境によってはいかようにも聞こえる。しかし、宇宙と関係づけることはそんなにない。どんな心持ちでそのように感じたのだろうか。
「つっ走り」とは鋭い表現である。力を感じさせ、ぐっと魅かれた。つっ走っていくのは自分の心中である。それはまぎれもなく「つっ走り」の感情が作者の内に持っていたからである。かなしさなのか、どうすることもできない心のありようなのか。抒情性のある心象表白である。夢に向かって、あるいは誰かのもとに、限りある人生を「つっ走り」たい。それは誰にも止めようがない。
●
0 件のコメント:
コメントを投稿