相子智恵
柳絮とぶ山河やにはにふりきつて 鈴木章和
「春の暮」(「俳壇」2018.3月号 本阿弥書店)所収
一読、みるみる上空へと飛んでいく柳絮が、下界を見下ろしているかのような視点を感じた。現代的に言えばドローンになって撮影をしているような気持ちと言ったらよいだろうか。それは〈山河〉という言葉の大きさが航空写真のような視点をくれるからだろう。上田五千石の〈渡り鳥みるみるわれの小さくなり〉ほどの分かりやすさではないのだが、同じような感覚を呼び覚ます。
〈やにはに〉でパッと舞い上がる柳絮の勢いや、その一瞬が強く印象付けられる。さらに〈ふりきって〉からは、写生対象である柳絮と自分が同一視されているような強い意志のようなものさえ感じる。写生からさらに違う次元に開けたような句だと思った。
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