相子智恵
いつの間に沖のつめたき浮輪かな 白石喜久子
句集『鳥の手紙』(角川文化振興財団 2018.4)所収
浮輪をして海で遊んでいた子が、いつの間にか遠くの沖まで泳いできていて、気づいたら陸が遠くなっていた。水の冷たさによって、ふと我に返る。その心もとなさが〈いつの間に〉に表れている。
何度も沖の方まで泳いでは帰って……を繰り返していたのかもしれない。何度目かの沖に出た時に、海水が冷たくなっていた。いつの間にこんなに水が冷たくなっていたのだろう。気づけば夕暮れも近い。
夢中で遊んでいて、ふと感じる寂しさや、もしかしたら帰れないかもしれないという恐怖。子どもの頃の遊びの中で、夕方の時間に誰もが多かれ少なかれそのような感情をもったことがあるだろう。そんな心細さを静かに思い出す一句だ。
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