2018年11月11日日曜日

〔週末俳句〕鳥の嵐 木岡さい

〔週末俳句〕
鳥の嵐

木岡さい


三日月を古い駅舎で手に入れた。

フランスのロックバンド「OISEAUX-TEMPÊTE」 (鳥の嵐)の公演に出かけた。会場は人口1900人あまりの小さな村モーベックの旧駅舎。長いあいだ廃駅になっていた建物に約20年前、文化振興協会がふたたび息を吹きこんだ。いまでは年中さまざまなイベントが行われている。



「鳥の嵐」でギターやキーボード、サックスを演奏するのはフレデリック・オーバーラント。彼を知ったきっかけは詩人のクリストフ・マノンで、2人のパフォーマンスをよく最前列で鑑賞した。オーバーラントの演奏に合わせマノンが詠う。例えばこんな詩を。

なにを今さらと愛。    おしむすべ分からず
に。     先のばしするお終い。  焦がしたあの
時めき。    なつかしくて切ない。   ここまで
かけた愛。     閉じこめろ永遠に。  しまつて
その心に。  のこりの毒がまわり。  ゆっくり
とてもゆっくり。    ぼくらを。      殺す。


多才なオーバーラントは写真家でもある。わたしが抱きしめるレコードのジャケットを指さして言った。
「その三日月とったの俺だよ」


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