樋口由紀子
臍出して踊っているとは妻知らず
延原句沙弥 (のぶはら・くしゃみ) 1897~1959
ああ、確かに。身近でもそんな話を聞いたことがある。叔父が亡くなって、弔問に来た人たちにその話を聞いて、叔母が仰天したことがあった。堅物で冗談一つ言わない叔父にもう一つの顔があったのだ。
妻だけが知らない夫のこと、夫だけが知らない妻のことなんて、世の中にはごろごろ転がっている。例の叔父だって、叔母が高価な着物やバックを買っていることなどつゆ知らずに亡くなった。だから、家庭が平和にまわっている。
延原句沙弥は須崎豆秋・高橋散二とユーモア川柳三羽烏と呼ばれていた。「寂しければ寂しいだけ、苦しければ苦しいだけ、この人生を明るく、朗らかに生きぬきたい。ハッキリ申せば、自分はもっと笑いたい」と述べている。〈請求書上様とありぼくのこと〉〈西瓜喰う首をだんだん前に出し〉〈妻をどう呼ぶかとアホなアンケート〉〈達者な医者がヤレたべろヤレ歩け〉〈波を見ていると波がものいうている〉。
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