樋口由紀子
空という小鳥かうなら本箱ね
妹尾凛 (せのお・りん) 1958~
空と言う名前のついた小鳥を飼うなら、鳥籠ではなく、本箱であるという読みを最初はしてみたが、それではどうもしっくりこない。なにか大切なものをこぼしているような気がした。それで、空というのがもし小鳥であったなら、つまり空全体を小鳥と捉えたのだと解釈を変更した。そして、もしその空の小鳥を飼うことになったら、我が家では本箱、そこしかないと作者は思ったのだろう。
本箱も部屋の片隅に置いてあるだけのものではなく、壁一面の棚のような本箱を思い浮かべた。そこは広くて出入り自由、そこなら、大らかな空にもお気に召してもらえるだろう。だから、自分で確認、納得するように「本箱ね」になのだ。〈ふれそうでふれないういろうの答え〉〈雨の日をむすぶ一枚のふろしき〉「川柳ねじまき#5」(2019年刊)収録。
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