2019年3月8日金曜日

●金曜日の川柳〔壺井半酔〕樋口由紀子



樋口由紀子






菓子箱に菓子は入っていましたか

壺井半酔(つぼい・はんすい)

菓子箱に菓子が入っているのはあたりまえで、そのための箱である。うっかりしていたとか、誰かが食べてしまったとかを言っているのではない。掲句は兼題「賄賂」で作られた川柳である。川柳は題詠吟が盛んな文芸でさまざま題が提出される。題をいかに取り扱うかを一工夫する。

「菓子箱」と「賄賂」ですぐに思いつくのが、「〇〇屋、お主も悪よのう」のいう時代劇である。悪代官が悪徳商人から小判の入った菓子箱を渡されるひとコマである。その場面を下敷きにしている。しかし、<菓子箱に小判が入っていましたか>ではない。「小判」ではそのまますぎて味がでない。「小判」と言わないで、〈菓子は入っていましたか〉ととぼけてみせる。その放り投げ方や位置取りが上手い。そのひねり技を川柳人は句会や大会で競い合う。

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