2019年11月15日金曜日

●金曜日の川柳〔鈴木節子〕樋口由紀子



樋口由紀子






プラゴミののたりのたりと春の海

鈴木節子 (すずき・せつこ) 1935~

あきらかに与謝蕪村の名句〈春の海終日のたりのたりかな〉のマネである。蕪村の句はおおらかで、ゆったりと、なんともいえぬ春の風情を感じさせる。しかし、プラスチックゴミが「のたりのたり」と春の日差しを受けて、海に浮いていたのでは、春の海の詩情などぶっ飛ばし、身も蓋もなくなる。

海に流れ出るプラスチックゴミ問題は深刻で、死んだ魚のおなかから大量のプラゴミが出て来た映像は衝撃的だった。プラゴミはいずれは魚の総重量数を上回るとの試算もある。「のたりのたり」などと悠長なことを言っている猶予はない。「のたりのたり」の言葉を逆手に取って、薄気味悪くし、現実を突きつけている。「触光」(61号 2019年刊)収録。

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