樋口由紀子
西瓜だと思ってポンと割るがいい
峯裕見子 (みね・ゆみこ) 1951~
「西瓜だと思って」とあるから、「西瓜」ではない。それが何であるか特定していないから、いろいろと想像する。読み手によって思い当たるものはそれぞれ違う。このように誘導してくれるのもこの句の魅力である。
西瓜は割って食べるもので、割ると真っ赤な果肉が絵になる。割るものでなくても、絵にならないものでも、西瓜だと思って割ってみたらどうかと励ましているのか、そそのかしているのか。言い回しは独特で威勢がいいが、心の綾は少し微妙である。楽しくて、やさしく、それでいて繊細。生きていく処方だろう。真っ当に生きている人の匂いがする。結果はどうでるかわからないが、細かいことは気にしないで、丁か半か、ポンと割るだけでも、何かが変化するはずだし、スカッとするに違いない。川柳「びわこ」(第688号)収録。
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