2022年11月14日月曜日

●月曜日の一句〔鈴木光影〕相子智恵



相子智恵






根元よりスカイツリーの枯れてゐし  鈴木光影

句集『青水草』(2022.5 コールサック社)所収

「東京スカイツリー」の名前が決まった時、名前に「タワー」がつかないことに新しさを感じた。気づけば開業から10年が経つようだが、個人的にはまだ10年か、というくらい風景に馴染んだような気もしている。

直訳すれば「空の木」。掲句は、この「木」というところから冬の季語「枯木」が導かれて〈枯れてゐし〉が呼び出されているのだろう。ただ〈根元より〉とあるから、生きていることを前提とした冬の季語の枯木ではなく、枯死しているという感じを含んでいると思われる。塔の見立ての句としてなるほど、と思う。

そもそもが無機質なものの描写に、有機的な息吹を与え、さらにそれを枯れさせるという、いくつかの屈折をもたせた句だが、そこがかえって不思議と「(疑似的に)生きている印象」を強めていると思うのは私だけだろうか。

あのスカイツリーの色のなさ(電飾で様々な色がつくようにできている)がもつ、無機質なのに何かに擬態するように光が変化していく姿とも、妙に通っている気がする。

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