相子智恵
根元よりスカイツリーの枯れてゐし 鈴木光影
句集『青水草』(2022.5 コールサック社)所収
「東京スカイツリー」の名前が決まった時、名前に「タワー」がつかないことに新しさを感じた。気づけば開業から10年が経つようだが、個人的にはまだ10年か、というくらい風景に馴染んだような気もしている。
直訳すれば「空の木」。掲句は、この「木」というところから冬の季語「枯木」が導かれて〈枯れてゐし〉が呼び出されているのだろう。ただ〈根元より〉とあるから、生きていることを前提とした冬の季語の枯木ではなく、枯死しているという感じを含んでいると思われる。塔の見立ての句としてなるほど、と思う。
そもそもが無機質なものの描写に、有機的な息吹を与え、さらにそれを枯れさせるという、いくつかの屈折をもたせた句だが、そこがかえって不思議と「(疑似的に)生きている印象」を強めていると思うのは私だけだろうか。
あのスカイツリーの色のなさ(電飾で様々な色がつくようにできている)がもつ、無機質なのに何かに擬態するように光が変化していく姿とも、妙に通っている気がする。
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