西原天気
※相子智恵さんオヤスミにつき代打。
※相子智恵さんオヤスミにつき代打。
台風の余韻の風の網戸かな 澤田和弥
台風が去ったあとも風は残る。《余韻》という表現は、空気の動きとしての風よりも、もっと、その湿度や、あるいは気分をも伝える。
《網戸》は、例えば雨戸を開けて現れた、つまり台風一過を示す事物であるとともに、夏の《余韻》でもあるだろう。
外(気象)と内(我=作者)の間に立つ《網戸》へと句が収斂し、《かな》と締めるこのかたちは、現象と時間、そして心持ちを、抑制的に伝えて、心地よい。姿かたちの良い句の醍醐味だ。
掲句は、初出『天為』平成26年(2014年)11月号。『澤田和弥句文集』(2024年10月/東京四季出版)より引いた。
澤田和弥(1980-2015)は、小誌『週刊俳句』にも多くの句文を残してくれた。遺句文集の発行を機に、あらためて氏とのわずかな交遊・かすかな交情に思いをはせたい。
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