10句競作(第2回)応募作品作品1点追加 2011.08.25本誌募集の10句競作(第2回)は34作品と、前回と同様多数の御応募をいただきました。誠にありがとうございます。審査・選考の骨子・日程が決まりましたので、以下にお知らせいたします。
1
8月
25日(木)
ウラハイに応募作品を掲載(コメント欄に感想等を自由に書き込んでいただいて結構です)
2
9月
1日(木)22:00より
●10句競作(第2回)の件審査選考ライブ。上記記事のコメント欄にて進行します。第2回の審査員は、榮猿丸氏、青山茂根氏、中村安伸氏。haiku&meの3氏です。
3 審査選考ライブにて、本誌掲載作品を決定(時間切れの場合、日時を改めて、続・審査選考ライブに決定を持ち越します。
4 【本日】
9月6日(火)22:00より
●10句競作(第2回)の件審査選考ライブ続編。上記記事のコメント欄にて進行します。第2回の審査員は、榮猿丸氏、青山茂根氏、中村安伸氏。haiku&meの3氏です。
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1日の審査選考ライブを待たずとも結構です。
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●
9月6日(火)22:00より当エントリーのコメント欄にて。
青山茂根、榮猿丸、中村安伸の3氏による
審査選考ライブ続編。
ご不明の点等ありましたら、seventhfox@gmail.com (生駒大祐宛)まで。
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【01 新・露出狂】
水泳帽を小田原に忘れけり
友人の紹介といふバナナなり
先生の桃色乳首草相撲
海月赤し深層心理なる夢精
緑蔭はどこへ水道管を罅
性的興奮中のはんざきなり
冷房に老いて激しき勃起なり
びちよびちよをぐちよぐちよにして桃食ひぬ
しやぶれしやぶりつけ西瓜しやぶりつくせ
戦後とはまさしく女陰大西日
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【02 株主総会】
想定問答繰返し明易し
株主の蟻の如くに来りけり
アイスティー飲み株主の語らへる
株主の席に置かるる団扇かな
会場のマイク係の玉の汗
異議なしに異議ありと云ふ白扇子
壇上の麦茶の滴だらけなる
円団扇決議に賛意示すかな
株主の後姿の夏帽子
総会の果て冷房の音大き
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【03 夏の傷痕】
炎昼のレバー貪るはとこかな
白南風の吾子の歯めきめき伸びにけり
服乱れしをんなゆるりと西瓜にのまれ
月光の乳房嬲る青鉛筆
二歳児に小児性愛を説く秋桜よ
台風や真つ赤になつてつきまとふ
なめくぢの残滓を跨ぐ団地妻
月光の石榴残してソープ嬢変死
夏の傷痕季節過ぎてもまだ癒えぬ
氷河期の気分味はふ雀かな
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【04 炎昼裡】
一行詩青い岬の尖端に
朝市の水が飛びつく跣かな
炎天や道は火が這ふ導火線
街中の印刷がずれ炎昼裡
炎帝に一縷の黒も許されず
大鳥居より片蔭を授かりぬ
風鈴のごと炎天に城うかぶ
蝉しぐれ寺院寺院に耳吊るし
はつきりもくつきりもゐる樹陰かな
ヨット入港夕焼けの幕が下り
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【05 座禅】
達磨さま蚊音にくしゃみ心太
仏法僧ストリートダンス木漏れ月
ヘッドフォンロックにしみる蝉の声
朝コーヒお釣りの手触れ梅雨晴間
目薬でまつげ流され戻り梅雨
炎暑かなお化け屋敷が停電し
日射病白犬家族ソフト舐め
イヤホンにうなじ取られて朝顔は
ボストンはクラムチャウダーしじみしる
日の本の達磨は起きる忍草
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【06 片膝】
上手より名優出でし夏芝居
新幹線改札口の花氷
地図にある川の蛇行や秋暑し
雑草を分けて水引草長し
八月大名港の見える座敷かな
片膝の膝にのりくる茄子の馬
皆人の整列したる流燈会
大広間静まり返る盆の月
銀漢の先端天主堂につき
流星の海へ海へと落ちゆけり
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【07 無限接点】
マンボウのまばたき車輪の発明
対話篇からはみ出す赤いストロー
泣きながら遠くへ投げる聴診器
長袖のシャツでくるんだ父の首
始まりを思い出すまで手をゆすぐ
消火用ホースに腋をくすぐられ
樹液すずやか責任感のある眼球
へその緒を液晶画面にくぐらせる
疼痛がノートに置いた玩具にも
日本語を嗅がすと汗をかく表土
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【08 夏休み】
甘味屋の夏暖簾より呼ばれけり
そこここに着信音や街薄暑
江ノ電の窓をはみ出す雲の峰
手作りの風鈴並ぶ無人駅
テーブルに猫の跳び乗る海の家
欄干に凭れてバナナ剥いてをり
玩具箱より溢れたる夏休み
宿題のノートに西日届きけり
ミルキーのとろんと甘く合歓の花
まだ潮の匂ひ残れる夏帽子
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【09 Summer In The City】
高速道の大き片蔭町つらぬく
美少女が団扇を配る繁華街
コンビニの埋蔵アイス探査せる
太陽と笑ひの飛沫区民プール
名画よく冷え冷房の美術館
駅徒歩5分マンション全戸西日のドア
夕焼の残照に浮く高層ビル
パチンコにつぎ込み夏の星降らす
駅のホーム混み合へれども夜涼かな
列車の灯銀の鎖や夏の果
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【10 夜 叉】
葛あらし絡繰木偶が夜叉となる
なまなまと海鳥の鳴く展墓かな
潮嗄れて天牛鳴くよ箱の中
人形を焼く栴檀の実の下に
穂孕みの風に柩を運び出す
早稲の匂ふや骨壷に骨満ちて
月代の裏戸より舟出しにけり
月待つや肉桂の枝噛みながら
蛇穴に入る時きつと宙を見る
曼珠沙華眼の筋肉の衰へて
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【11 蝉鳴くや】
山門に気勢をあぐる蝉嵐
向日葵の千の眼の見し殺人者
被災地の牛舎に残る扇風機
虹の橋登りはじめる兎と亀
驟雨きて街に火薬の臭ひ満つ
遠雷と原発事故の光化学
金蝿よ俺の額は生きてゐる
蝉鳴くや六日九日十五日
炎天に孤独死のゼロの広報車
ブナ林にゲンパツと鳴く秋の蝉
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【12 情熱諸島】
不意打ちは女人高野の自販機か
にせもののタンバリン買うかの裸族
情熱でやつめうなぎにふたをする
怪獣のかさぶたじょうの和平かな
鶏頭とするだるまさんがころんだ
仏壇を投げればぜんぶコヨーテだ
肺も骨も脳をおいぬき秋の朝
ながれぼし一円玉は浮きすぎる
横綱は枯葉をつけて現れる
青葱のしろいところは父の番
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【13 地球空洞説】
行き止まりばかりではない半ズボン
萬歳に圍まれてゐる暑さかな
アルピノがアルピノを喰ふ夏館
夏草の誰かが掘つた落とし穴
生き埋めになることもある流れ星
地下道の階段濡らすラムネかな
ダダ漏れの個人情報蟻地獄
夏蝶や地球の裏側へと放つ
ラッカーとポーとウェルズと夏料理
これからは嘘だけついて端居して
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【14 だれにともなく】
なにがなし桑の実食うて国想ふ
水馬たゆまずやまずおなじ位置
幼ゆび指せばへんぽん蛇の衣
遠花火音待つこころ沸と湧く
燕の巣そこに迂曲の風とほる
蝙蝠のばらばら騒ぎくる逢瀬
うつしよの蛇身曝して川渡り
採血の針刺し直すアマリリス
またひとつ夕日が沈む原爆忌
蝉時雨だれにともなく黙祷し
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【15 夏の果】
本堂の無道の墨書涼しかり
イエスタデーBGМに魂迎
黒文字の水羊羹をなだれゆく
空蝉となり静脈をさらしをり
みんみんのみんともいはず夏の果
高殿を深くとよもす法師蝉
夕暮れて蝉時雨より虫時雨
田の神のビルの間や秋暑し
折鶴の白ばかりつり稲つるび
遠くより煙の匂ひつづれさせ
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【16 ヴァカンス】
豊の秋たましひつぶしたまふ日の
発語して光をにごす須臾となる
天と地を構造できず百舌しづか
われもかうゐるやうでゐてゐないやう
イッヒ・ロマン棄てにけり小鳥くるたびに
空棚に在るいつまでも鳥影が
白桃の手よまれびとを抱かずとも
宵闇や白い果肉に食われゆく
あてのない手紙のやうに折れ曲がる
ヴァカンスやすべからく季節崩ゆるべし
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【17 雨】
バナナ腐る雨は降らないだろう傘折る
ハリボテのソフトクリーム雨に溶ける
よほほと嗤ふあんなに快晴だつたのによほほ
嗚呼予想を裏切つてカアテンの裾が濡れた
雨降る否降りやがるのだキスしたら駄目かよ
喧嘩した雨音のかゞやきが邪魔で邪魔で
手をつないでやらんでもない水たまり
びちゃびちゃのブランコ漕いで乾くまで逃げんな
いろんなものが滴るなかに手もあった
この雨を無理やりまとめる虹を作らう
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【18 夏桃さん】
冷蔵庫の中から取り出す夏休み
黄桃をもてはやしてる吉祥寺
どぶ川に流れるきみの桃本や
夏の日にコンドームと桃拾う友
あと少しあいつの桃の季も終はる
白桃の如きあなたの膝枕
ストッキング皮を脱がせて食べやうか
半分にけつを割つたら美味な汁
願わくは桃の忌になれ くそやろう
白桃はシンデレラなので帰ります
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【19 離味句素】
吾一人置いて立ち去る鰻かな
いかづちにまかせて泣けよオットピン-S
酸漿剥いて歯科を明るくしてあげた
天の川わたる南京豆離脱
幻影は二十世紀を齧る姉か
エレジーのたとへば秋の小樽運河
排卵がなくて滑子のしらべかな
鹿威し貫く業の如きもの
渋柿や痴狂ひにして人の美味
人間を並べておけば交(さか)るなり
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【20 晩夏】
吹き抜けのヨガスタジオや仏桑花
バナナ食ぶ朝一番のヨガクラス
ピアソラに酔ふごと昼の冷酒かな
夏深し崩して食ぶるタコライス
晩夏へとロングボードの漕ぎ出しぬ
モニターに映る花道秋立てり
秋蟬や公園に向く楽屋口
小劇場のチラシ分厚き世阿弥の忌
虫の音や補修されたる歌詞カード
輸入盤開けると匂ふ夜長かな
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【21 行つたきり】
うきくさの高きところに星盛る
箱庭を真白き舟のもり上がる
あたらしき蜘蛛の囲に水つもりけり
洗つても洗つても砂大西日
蓮の葉と空の埋もれて午後来たる
階段の蟬の骸が濡れてゐる
鳥飛ぶ仕組み水引草の上向きに
初秋やゆふかぜ朱鷺に長くふき
月の出を待つ間に森の闌けにけり
おとうとの七夕笹の行つたきり
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【22 あちら・こちら】
草刈の野にひしめくや小説家
蜘蛛の囲や少女のふるふ大鋏
ゆらゆらと子ら運ばれてゆく緑
輪郭の確かなわたし髪洗ふ
夏月に眠りの糸が垂れてをり
花あやめここは子供の来ない家
箱庭に人差し指を棲ませけり
ちちははの緩慢な水あそびかな
蛇苺そこから先が死者の国
たましひのかたちの小石夏ともし
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【23 生簀】
花過ぎてプロレスの来る広場かな
噴水に鳥の名あまた知る人と
プールより見ゆる生簀のレストラン
一雨きて蛍日和と言ひにけり
とりあへず丼に受く兜虫
盆僧のまへにビー玉転がり来
アッパッパつかめば婆が抜け落ちる
草笛吹くデモ行進に連なりて
恐竜の尻尾重たし夏の果
三叉路の左右とも霧うしろも霧
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【24 果実】
ハート型蜜内蔵のリンゴ一顆
花のごと皮をひろげてミカン食ぶ
黒ブドウ一粒ごとの一輝点
イチヂクや平然とつく嘘に嘘
ザクロ裂くまず付け爪を外しては
前世はバナナと信じつつ食す
握りたる手よりトマトの溢れ出す
石版の堅さ冷たさみたいなナシ
眼窩にはイチゴををさめ少女たち
書信代はりに送る富有柿ふたつ
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【25 暮れる】
蛇口より懐かしきものかよひくる
渦巻の途中の二重丸は良し
花びらの目ならば目びらとも言ひぬ
似顔絵とならずに顔の絵が暮れる
引つかけるため頂点が三日月で
蔓巻きぬ楽器となれば良かりける
海賊は水を含んで重かりき
されば鮫を次男とすれば分かるなり
魂と裸連結して褌
冬空に干せば消しゴムらしくなる
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【26 全力】
マスクして菜虫を殺す霧をゆく
ががんぼの窓を叩いてゐる全力
羽蟻に羽ありて暮らしは変はりなし
灯を消して火蛾百匹とゐるぬめり
蜘蛛潰す音つぎの日もそこにある
黒蟻の何も担がぬ白き昼
糸蜻蛉墓石は聖書開くかたち
蝉落ちてお悔やみ欄に乗せてやる
放埒の貌を叩いて黄金虫
十匹に一匹足りぬ晩夏かな
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【27 三分の一】
初夢に母と話せば覚めにけり
子の肩に触れてはじけししやぼん玉
春愁ピアノの埃つよく拭く
振り返りやがてまつすぐ入学子
ふらここを少し揺らして降りにけり
後ろ手に子は手紙持ち母の日よ
初任給手渡してゐる帰省かな
打解けしいとこ同士や踊の輪
全集の前の持ち主夜の秋
抽出しに方位磁石や夏の果
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【28 夏の谺】
夏館ソプラノ纏ふ天使像
一眼のあり向日葵も原子炉も
夏深し闇に伸びゆく倉梯子
いま吾子にはじめの記憶草清水
冷酒一盞雲滑らせて空は坂
泣き終へて松山鮨のどこ崩そ
木曜のくちづけ涼し切子玉
ラマダンの大皿に盛るダリヤかな
花火の夜人を待たせて遠目なり
二万年のちにも仔ども猫じやらし
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【29 尾行】
テロリストの墓飾るための菊ことごとく
黒猫に尾行されてた月角曲がる
髪洗ふ巫女百人の紅き爪
チェシャ猫一番涼しい場所に浮いている
君の体届けに君の棺追ふ月夜
猫のゾンビ鼠のゾンビと虹ばかり
青い月。暗闇にリムられてゐる
最初の猫がまだ遊んでる宵闇
十年分の抗鬱剤ぶちまける秋の海
夜開く猫の保健室の風鈴
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【30 夜の果ての旅】
忘却の革命の血のさくらんぼ
シエスタの人買ひ薄目あけて眠る
殺むれば音の気になる冷蔵庫
疲鵜にだいぢやうぶだいぢやうぶと云はれけり
八月の甘納豆を深読みす
へうたんにハイとこたへて魂(たま)抜かれ
ジョーホーホシジョーホーホシと秋の蝉
水澄むや一つ根に離れ浮く平和利用と核武装
心中の片割れとして盆をどり
「夜の果ての旅」に誘ひぬ夜学子は
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【31 春雷】
風雪に曲がりし木々も芽吹きたる
或る日胸に春雷が落ち今がある
玫瑰や雨に消されし波の音
病葉の重なりゆける水の底
ひねくれし胡瓜どれもが無農薬
ふたりとは一人と独り夜の秋
砕け散る硝子色なき風となる
倒れてもおのれを曲げず曼珠沙華
音もなく翅を使ひし冬の蠅
星冴えて太古の空を取りもどす
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【32 十点鐘】
一月三十一日 ジャイアント馬場
王道忌静かなる光源月明かり
四月二十八日 ルー・テーズ
鉄人忌しなやかな筋肉(にく)の美しき
五月十三日 ジャンボ鶴田
怪物忌書き掛け論文めくる風
六月十三日 三沢光晴
喉鳴らし猫の背伸びや翠玉忌
七月十一日 橋本慎也
豪雨去り天跨ぐ虹爆勝忌
七月十七日 ブルーザー・ブロディ
超獣忌雄叫びこだまし空を舞う
七月二十八日 カール・ゴッチ
偉大なる力の哲学ゴッチの忌
八月二十八日 山本小鉄
道場に古びた竹刀や軍曹忌
十一月二十五日 星野勘太郎
喧嘩屋の拳の早し突貫忌
十二月十五日 力道山
人を超え神となる意志力道山光浩の忌
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【33 卯の花にほふ】
郭公や次男に妻のやうな嫁
青かへで小股の切れたをなご抱く
入道雲抱へきれないまま絶句
卯の花にほふ「かあさん」と言ふ口癖
残暑かな「雨ニモマケズ」を諳んじる
線香のけむり真っ直ぐ遠花火
時計草虫の音止むと泣く子かな
締め切り迫る鈴虫に部屋明け渡す
悪字を打つパソコン画面水中り
クマゼミ鳴くマイクを持った好好爺
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【34 御来迎】
山彦に応へて手振る雲の峰
空眩し雲海の上に出でたれば
赤岩の頭と称へ雲海に
御来迎斜め後ろに立ちてゐし
御来迎虹に呑まれて消えにけり
駒草に近づけてゐる目鼻かな
駒草やカイゼル髭を撥ね上げて
駒草や八ヶ岳(ヤツ)の外れの天狗岳
マジックの校名かすれ大テント
天幕村に酒飲みに来し小屋泊まり
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以上 34作品
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