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2014年3月29日土曜日

●近未来型家族 山田露結

近未来型家族

山田露結




家族を連れて回転寿司という近未来型ハイパー飲食店に入った。ほほう。昼どきとあって、どの席も近未来型家族でいっぱいである。店内にはいくつかの回転レーンが設置されていて、その上を陽気な音楽に合わせてまぐろ、はまち、真鯛、甘えび、たこ、いか、ほたて、うに、いくら、豚塩カルビ、ローストビーフバルサミコソース、ガーリックソースハンバーグ(さび抜き)、チーズハンバーグ(さび抜き)、杏仁豆腐(さび抜き)、などなどのネタを乗せた寿司が次から次へと流れて来る。ポップだ。カラフルだ。アートだ。しかも、すべて一皿90円。まるで、夢の世界に紛れ込んでしまったようでクラクラする。若い女性店員に案内されてボックス席に座る。女性店員はにこやかに「こちらから注文して下さい」と言って席に取り付けられている液晶画面を指した。はあ? ん? 私は軽い興奮を覚えながら「とりあえず、ビール下さい」と画面に向かって話しかけてみたが、何も反応がない。それを見た女性店員が「指で触れてメニュー画面に進んで下さいね」と言ってクスッと笑った。なるほど、そういうことか。私がしばらく液晶画面に戸惑っていると、目の前をいわしの一群が通り過ぎて行った。私は、感慨深くその一群を見送った。ああ、これで、ようやくウチも近未来型家族になれるのだ。

2013年8月27日火曜日

【レコジャで一句】秋灯の照らすレコード裏がへす 山田露結

【レコードジャケットで一句】
秋灯の照らすレコード裏がへす  山田露結


Bob Dylan/Another Side of Bob Dylan
 
※コメント欄へご自由に投句して下さい(有季、無季、自由律ほか何でも、何句でも可)。

もうすぐ夏休みも終わりますね。
ウラハイで突然はじまった特別企画
「レコードジャケットで一句」ですが、
今回でいったんおしまいということにいたします。
ご参加くださった皆さま、ありがとうございました。
また突然はじまるかもしれませんので、
そのときはぜひご参加ください。

2013年8月20日火曜日

【レコジャで一句】パーティーのはじまる釣瓶落しかな 山田露結

【レコードジャケットで一句】
パーティーのはじまる釣瓶落しかな  山田露結


Joe Bataan/SUBWAY JOE
 
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2013年8月13日火曜日

【レコジャで一句】いつしかに話尽きたる秋暑かな 山田露結

【レコードジャケットで一句】
いつしかに話尽きたる秋暑かな  山田露結


The Specials/MORE SPECIALS
 
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2013年8月6日火曜日

【レコジャで一句】革命は起こらず秋の立ちにけり 山田露結

【レコードジャケットで一句】
革命は起こらず秋の立ちにけり  山田露結


The Clash/BLACK MARKET CLASH
 
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2013年7月30日火曜日

【レコジャで一句】いづれ骨いづれ肉塊はたた神 山田露結

【レコードジャケットで一句】
いづれ骨いづれ肉塊はたた神  山田露結


T-BONE WALKER/STORMY MONDAY BLUES
 
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2013年7月28日日曜日

〔今週号の表紙〕 第327号 ひまわり 山田露結

今週号の表紙〕 
第327号 ひまわり

山田露結


(自分を変えようと思っていた)

「ベランダに花が咲いてるっていいよな。」
ある日、何気なくそう思った。それで近所のホームセンターへ花の種を買いに行ったのが五月。それまで花なんて育てたことがない私だったが、ひまわりくらいなら簡単に咲くだろうと思って、買ってきてその日に種をまいた。切り花用の小さめのひまわりなので咲いたら部屋に飾って妻を喜ばせてやろうと思った。

(自分を変えようと思っていた)

数日すると芽が出てみるみる葉が大きくなった。日々順調に成長して行くひまわりを眺めながら、早く花が咲かないかと楽しみにしていた。

(自分を変えようと思っていた)

ところが、葉はぐんぐん広がってもうこれ以上は大きくならないだろうと思われるほどに成長しているのに、いつまで経っても花が咲かない。何がいけないのだろう。種をまいてからすでに二ヶ月近くが経過していた。

(自分を変えようと思っていた)

ある朝、いつものようにひまわりに水をやろうと鉢を覗くと、茎の先端に放射状に広がる部分を見つけた。「おっ!」と思った。もしかして、これが花になるのだろうか。うん。そうだ、きっとそうに違いない。私はワクワクしながら花が咲くのを待った。しかし、それから幾日か経過してもひまわりは一向に咲く気配を見せない。もちろん、水は毎日欠かさずやっている。

(自分を変えようと思っていた)

現在、私がその放射状の花になるかもしれない部分を発見してから二週間ほど経つのだが、ひまわりはまだ花を咲かせないままでいる。ひまわりは、ひまわりでない自分に変わうとしているのかもしれない。


週俳ではトップ写真を募集しています。詳細は≫こちら

2013年7月23日火曜日

【レコジャで一句】落とされてをみな笑へるプールかな 山田露結

【レコードジャケットで一句】
落とされてをみな笑へるプールかな  山田露結

Elis Regina / como & porque

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2013年7月16日火曜日

【レコジャで一句】昭和あゝ夏の思ひ出ばかりなる 山田露結

【レコードジャケットで一句】
昭和あゝ夏の思ひ出ばかりなる  山田露結
Perez Prado/GOLDEN ALBUM

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2013年7月9日火曜日

【レコジャで一句】暑き夜といふほかは記憶にあらず 山田露結

【レコードジャケットで一句】

暑き夜といふほかは記憶にあらず  山田露結



Pete Terrace/KING OF THE BOOGALOO

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2013年7月2日火曜日

【レコジャで一句】涼しさや昼星に手を差し伸べて 山田露結

【レコードジャケットで一句】

涼しさや昼星に手を差し伸べて  山田露結



WHATNAUTS/REACHING FOR THE STARS

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2013年6月25日火曜日

【レコジャで一句】冷やし中華の具の細切りや旅の途中 山田露結

【レコードジャケットで一句】

冷やし中華の具の細切りや旅の途中  山田露結



John Lee Hooker/TRAVERIN’

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2013年6月18日火曜日

【レコジャで一句】白靴や恋人とその恋人と 山田露結

【レコードジャケットで一句】

白靴や恋人とその恋人と  山田露結



MEL&TIM/Starting All Over Again

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2013年6月11日火曜日

【レコジャで一句】Bカップぐらいかしらと簾ごしに言う 山田露結

【レコードジャケットで一句】

Bカップぐらいかしらと簾ごしに言う  山田露結



Jimmy McGriff/Eletric Funk

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2013年4月13日土曜日

〔おんつぼ47〕甲斐バンド 山田露結

おんつぼ47


甲斐バンド

山田露結




おんつぼ=音楽のツボ


甲斐バンド。不思議なバンド名である。甲斐バンドのリーダーは甲斐よしひろ。つまり「名字」+「バンド」がバンド名なのである。私がバンドを組んで山田バンドとするのと同じである。まったく何の工夫もない上にリーダーがずいぶん威張っているような感じである。

甲斐よしひろはバンドのリーダーであり、ボーカリスト。バンドのほとんどの曲の作詞作曲も手がけている。なかなか男前である。声もいい。スターのオーラもある。おまけにバンドのほかのメンバーは極端にキャラが薄い。ようするに甲斐バンドは「甲斐よしひろ&His Band」みたいなものである。

私が小学生の頃のある日、通学路の途中にある時計店の店先にスーツを着た四人の長髪男たちの等身大パネルが立て掛けられているのを見かけた。そのパネル写真の四人の中で一番ハンサムな男が他の三人より一歩前に立ってこちらを見てにっこり笑っていた。そして、そのすぐ下には「ヒーローになる時、それは今」というキャッチコピーが印刷されていた。甲斐バンドの新曲「HERO(ヒーローになる時、それは今)」がセイコー腕時計のCM曲に採用され、甲斐バンドがそのCMキャラクターとなったのである。

数年前にヒットした同じ甲斐バンドの「裏切りの街角」とはがらりとイメージが変わって、あか抜けた感じの明るい曲調だった。そしてこの「HERO(ヒーローになる時、それは今)」はみるみるうちに大ヒット曲となり、テレビ、ラジオでしきりに耳にするようになった。やがて、私は甲斐バンドのボーカリストの名前が「甲斐よしひろ」だという事を知った。

しかし、私には甲斐よしひろの「よしひろ」がどうにも野暮ったい名前に思えて仕方なかった。私は甲斐よしひろ以外に「よしひろ」という名前の有名人を知らない。この人はどうして「よしひろ」なんだろう。しかも、ひらがな。「ミッキー甲斐」とか「ジェームス甲斐」とかロックっぽい芸名にしようとは考えなかったのだろうか。せめて(沢田)ケンジとか(西城)ヒデキみたいな呼びやすくて親しみやすい名前にすればよかったのにとずっと思っていた。

実は、私も本名を「よしひろ」という。私は子供の頃からこの「よしひろ」という自分の名前がキライだった。何故だろう。「よしひろ」の「し」「ひ」とi音が続くところは少し発音しにくく、そのためか私のことを「よしひろ」と呼ぶ友達は子供の頃から誰一人おらず、「山田くん」とか「山ちゃん」とか名字の方で呼ばれていた。私の名前が「よしひろ」だということを知らない同級生もいた。さらに、私が通う小学校には、いなかっぺ大将のような風貌していて、ときどき廊下で奇声を上げるため男子からはからかわれ、女子からは白い目で見られていた学校ではちょっとした有名人の上級生がいて、彼の名前は私と同じ「よしひろ」だった。そんな事もあって、私は本当にこの名前を疎ましく思っていた。この名前には何ひとつ長所がないように思われた。せめて(沢田)ケンジとか(西城)ヒデキみたいな呼びやすくて親しみやすい名前にしてくれたらよかったのにと本気で両親を恨んでいた。だから、甲斐バンドのボーカリストの名前が自分と同じ「よしひろ」だと知ったときは正直、複雑な気がしたものである。

「この人もよしひろか。」

そして私は、毎朝通学路の時計店の前で爽やかな笑顔で立っている等身大パネルの「よしひろ」と、そこに記された「ヒーローになる時、それは今」というコピーを見るたびに、このあか抜けない名前をもつ自分の境遇を何とか克服しようと「がんばれ!よしひろ!大丈夫!よしひろ!」と自分に言い聞かせながら学校へ通ったのであった。




2012年12月26日水曜日

●「彼方からの手紙」第6号! & バックナンバー配信のお知らせ

「彼方からの手紙」第6号! & バックナンバー配信のお知らせ

こんにちは。山田露結です。毎度お騒がせしております「彼方からの手紙」6号配信のお知らせです。この度、ゲストにこしのゆみこさんをお迎えしました! 実は私、こしのさんのファンでありまして、今回ゲストにお迎えできたことを大変うれしく思っています。

こしのゆみこ句集『コイツァンの猫』

こしのさんの句には遠い日の家族や故郷が多く登場します。こしのさんの句を読むたびに私はたまらなく切ない気持ちになってしまうのですが、私はこれをこしのブルーと呼んでいます。これは、もしかしたら、こしのさんと私が同郷(愛知県西尾市)出身であることも少なからず影響しているのかもしれません(面識はないんですけどね)。

さて、「彼方からの手紙」です。今回のテーマは「動物」。はたしてこしのブルーがあなたを待っているのでしょうか。

ぜひお近くのコンビニで「彼方からの手紙」を受け取って下さい。あ、もちろん、私たち(山田露結と宮本佳世乃)も詠んでますよ。よろしく。

※「彼方からの手紙」は山田露結と宮本佳世乃がコンビニのマルチコピー機を利用して配信する俳句通信です。


☆「彼方からの手紙」は、お近くのセブンイレブン、またはサークルKサンクスにてお受け取り下さい。

ネットプリントの受け取り方(セブンイレブン)

1.セブンイレブンへ行く。
2.マルチコピー機の「ネットプリント」を選択して予約番号を入力する(プリント料金 60円)。
3.手順に従ってプリントを開始する。

予約番号 11866786
プリント料金 60円
配信期間 12月24日(月)~31日(月)23時59分まで
配信場所 全国のセブンイレブン

セブンイレブンネットプリント


ネットワークプリントの受け取り方(サークルKサンクス)

1.サークルKサンクスへ行く。
2.マルチコピー機の「ネットワークプリント」を選択してプリント料金 60円を投入。約款を確認し「同意する」ボタンを押す。
3.ユーザー番号を入力後、手順に従ってプリントを開始する。

ユーザー番号 Q786BZYX9G
プリント料金 60円
配信期間 12月24日(土)~1月1日(日)15時00分まで
配信場所 全国のサークルKサンクス

サークルKサンクスネットワークプリント


☆「彼方からの手紙」バックナンバー配信のお知らせ☆

「彼方からの手紙」創刊号!
予約番号 28738395

「彼方からの手紙」2号!(ゲスト:関悦史)
予約番号 71398440

「彼方からの手紙」3号!(ゲスト:御中虫)
予約番号 27RYATR7

「彼方からの手紙」4号!(ゲスト:T&lamp)
予約番号 JU25RU7E

「彼方からの手紙」5号!(ゲスト:田島健一)
予約番号 K8888FH5

※12月31日(月)まで、セブンイレブンのみでの配信です。



2012年2月23日木曜日

●夏蜜柑

夏蜜柑

山田露結


少し前にツイッター上で「夏蜜柑」は春の季語か?夏の季語か?をめぐるやり取りがありました。
http://togetter.com/li/249721

「春派」、「夏派」に別れてのこのやり取り、結果的にはどちらにも軍配は上がらなかったのですが、私は俳句に関わる者同士(私も含めて)が「どっちだ、どっちだ。」みたいな感じで真剣にやり合っていることの「可笑しさ」を感じながら楽しく参加させてもらいました。

「春派」、「夏派」、どちらの意見もそれなりに納得出きる(たぶん)ものであり、まあ、どちらでもいいじゃないかという気も少しするのですが(春か夏かによって句の鑑賞に大きく影響しますので本当はきちんとして欲しいw)、個人的には「夏」の文字が付いている「春」の季語というのもなかなかオツだよなあということで、今のところとりあえず「春派」です。

さて、いったい「夏蜜柑」は春、夏どちらなのか。

皆さんもご一緒に頭を悩ませながら、ぜひ「夏蜜柑」で一句詠んでみてはいかがでしょうか。


2011年12月27日火曜日

●エロ虫道中記 関悦史

エロ虫道中記

関 悦史


12月23日の俳コレ竟宴の際、家が遠いので宿を取った。

その宿に山田露結さんも同宿することになった。

直接会ったのは去年の超新撰竟宴のとき一度きりだったと思うがツイッター上ではおなじみである。

そこに御中虫さんも京都から参加することになり、道に迷わないよう同じホテルを予約した。

すぐにこの三人の頭文字を取って「エロ虫」なるユニット名ができたが、果たしてこれがユニットなのか何なのかはあやしい。

少なくとも、今後特に三人で何かやる予定は今のところない。

竟宴当日は、市ヶ谷駅で待ち合わせたが、集まる前後「エロ虫」「エロ虫」とツイートしていたら、フォロワーが四人ばかり減った。

三人で駅前の喫茶店に入ったら、突然クリスマスプレゼントの交換会となった。

私がもらってしまったのは、露結さんからはソフト帽、虫さんからは銅板を打ち出してマンボウを描いた自作作品である。私の顔写真を見てマンボウを連想したらしい。

露結さんから虫さんへは鹿の毛皮のような柄のモフモフした帽子、虫さんから露結さんへは虫さんが絵を描いた京都弁カルタ(市田ひろみのCD付き)なるものが行った(他にもう一点公表不能の物件も)。

私は何も用意していなかった。人としていささかまずいのではないか。

竟宴パーティではスピーチに指名された露結さんが、いきなりRCサクセション「スローバラード」を歌いだした。この辺の行動、露結さんの作風と一脈通ずるところがなきにしもあらず。

都内では滅多に会えない虫さんもパーティで大人気だった模様。

来るときには装着していた真っ白なウィッグを虫さんがいつの間にか外してボーズ頭になってしまい、ウィッグのほうはどこをどう渡り歩いたのか、会場の隅に設営されたネット生中継用のインタビューブースで猿丸さんがかぶってニコニコしながら立っていた

遠くから見て、虫さんが急に背が伸びたかと思ったが、近寄ったら猿丸さんだったので直ちに奪い取り、私もかぶって、撰をさせてもらった野口る理さんと一緒にインタビューを受けた。話の内容や表情はごくマトモだったはずである。映像は見ていないが、そのことが余計に不条理感をかきたてた可能性はなきにしもあらず。

宿が取ってある安心感で三次会まで出てしまい、タクシーでホテルに入ったのが夜中の三時過ぎ。

翌朝、虫さんが喘息の発作を起こしたようだが、部屋にあった湯沸しを吸入に使ったとかで、チェックアウトの時間には落ち着いていた。

いつの間にか虫さんのお兄さん(都内在住らしい)の車に乗せてもらう計画になっていたらしくて、こちらもボーズ頭の虫兄氏到着とともに三人同乗、まずは露結さんが行ってみたいという築地市場へと向かう。

カーナビでは市場近くにいるはずなのだがどこなのか判らずにいたら、露結さんがいきなり車から飛び出した。警官を発見して道を訊いてきたのである。

おかげで無事、築地の場外市場にたどりついて(「場内」は業者しか入れない)、四人でうろうろ。厚めに削ったカツブシを試食に差し出されて露結さんは食いながら進む。


せっかくだから昼食に寿司でもと並びかけたがどの店も大行列で、印度カレーで済ませた。注文と同時にサッと品が出てきたが、大皿のカレーの飯の上に千切りキャベツが山盛りというもので、これは少食な虫さんには無理だった模様。


場外市場を一巡して、またカツブシを受け取ってモグモグしたりもしつつ露結さんがTシャツか何かを買ったら、店のおばちゃん二名が目引き袖引きしつつ、ついにこらえかねたという風情で「あんちゃん、いいキモノだね~」と寄ってきた。

こちらは何を隠そう呉服屋の若旦那であると私が紹介すると、「あらまー役者さんか何かかと思ったわ」などと適当なことを言い、露結さんの説明も、感心しているのか上の空なのかよくわからぬ調子で聞きつつ羽織の刺子を撫で回したりしているので、露結さんがおもむろに裾をはだけ、鯛がぎっしり書かれた真っ赤な襦袢を遠山の金さんの桜吹雪よろしくお目にかけると、「いや~!!(はぁと)」とも「うゎ~!!(はぁと)」ともつかぬ嘆息混じりの大絶叫。これはどちらにしても「(はぁと)」は付く。

何だかよくわからないが何ごとかを十二分に堪能した気分になって市場を出ようとすると、ホワイトボードの「拾得物掲示板」なるものがあり、ここに書かれた落し物がまた場所柄を反映した摩訶不思議なものだった。

「アジの開き」はまだいいとして「万能紋甲イカ」が既に何だかわからない。

これは後で検索して、細い切れ込みを無数に入れた、握ればそのまま寿司種にできる状態の紋甲イカと判明したが、「シルバー」とだけ書かれていたのはいったい何だったのだろう。

去りがけに皆で一句作ることになった。

   カレーライス食ふ冬麗の築地の市場  露結

   築地ぢゆうの段ボールを集めりや御殿が建つぜ 魚臭い  虫

   「シルバー」といふ落とし物鯵も烏賊も  悦史

露結さんのは飯島晴子の本歌取り、虫さんはどこへ行っても独自の着眼と威勢のよさがお見事、私は何も思いつかずに見たまんま。

吟行は苦手なのだよなどと言いつつ、さて次に向かったのが虫さんが行きたかった神田神保町の古書店街。


虫さんが探していたのはリン・マーギュリス、ドリオン・セーガン『生命とはなにか』なる本と、ガイア仮説に関する本、それからラブクラフトだったらしいのだが、古本というのは決め打ちして出てくるものではないので、どれも見つからず、虫さんは代わりに渡辺公三・木村秀雄『レヴィ=ストロース『神話論理』の森へ』とマーティン・ガードナー『ルイス・キャロル―遊びの宇宙』の2点を購入。

田村書店のワゴンを私がざっと確認している間に店内を見た虫さん、かつてのバイト先がちょうどこんな感じで一緒やわという。

虫さんが中にいるうちに露結さんが隣りの小宮山書店に入っていったので皆で追ったら、ここはしばらく来られないでいるうちに、中が古書店というよりは画廊に近い雰囲気になっていて、いたるところに版画、ポスター、玩具、人形等が置いてあった。

古書店街もひととおり見て靖国通りを駐車場へと戻りかけたが、白山通りとの交差点で信号を待っている間に、露結さんが「横尾忠則の版画10万円のがどうにも気になる。カード使えるかな」と言いだしたので、全員一応つきあって小宮山書店まで引き返す。

階段の上にかかっていた版画を皆で再確認している間に、店員と話していた露結さん、即座に購入を決めて、見る見るうちに発送手続きに入ってしまった。

驚いて《買ったぁあああ!!》などとツイートしたら、喫茶店で休んでいるうちに四ッ谷龍さんから返信。

永田耕衣さんから教わった河井寛次郎の名言、「物買って来る、自分買って来る」。良い買い物をなさいました。

虫さんは一連の露結さんの男っぷりに賛嘆頻り。

紀伊国屋新宿本店の俳句本フェアも見たかったところだが、露結さんの帰る時間が迫っていることとて断念。

東京駅前で降ろしてもらい、別れを惜しんで露結さんと虫さん、虫さんと私の順で握手、そのままさらにぐじゃぐじゃモフモフと冬着の上からハグしあって、ついでに露結さんと虫さんから尻を触られまくる。

この辺、何でこんなことになるのか分からない人には全然分からない話だが、先日、西原天気さんの句集出版記念会のときに、榮猿丸さんが触らせてと唐突に言い出し、猿丸、佐藤文香の二名から尻を撫で回されるという事態が出来して、それ以後縁起物なのか何なのか、無闇に撫で回されてられることになってしまったのである。竟宴パーティでも他の人たちから散々撫で回された。説明してみても結局何だかよくわからない。

虫さん兄妹と別れて改札へ向かう途中、露結さんが一言。「触れてよかった。あのタイミングで触らなかったら男二人になってから公衆の面前でじゃ触れませんからね。」

こうして「エロ虫」東京見物の一日は終わった。



写真提供:山田露結/写真リンク(thanx):spica虫日記R6

【関連リンク】
楽しすぎて適当にしか書けないんですよね:虫日記R6
「エロ虫」写真館:Rocket Garden~露結の庭

2011年11月13日日曜日

〔今週号の表紙〕第238号 蔵 山田露結

今週号の表紙〕第238号 蔵

山田露結


我が家に「蔵」がありました。いわゆるなまこ壁のいかにも「蔵でございます」という風情の建物ではないのですが、ウチの家族は皆その建物を「蔵」と呼んでいました。

我が家は呉服店を営んでいて「蔵」には店の在庫やら備品やらがたくさん仕舞ってありました。ようするに倉庫ですね。何でも「蔵」は築百年以上は経っているらしくて私は物心ついた頃から毎日「蔵」を目にしながら育ちました。でも、私が実際に「蔵」の中に入ることは滅多にありませんでした。

小学生の頃のある日、ひとつ年下の弟が突然行方不明になってしまったことがあります。夜遅くまで家に帰らず、どこを探しても見つからないために両親が警察に通報し、夜中に警察官が何人も家にやって来て弟の捜索をはじめました。

警察が家に来るなんてただ事じゃないと思いながら私も一緒に弟を探しました。捜索がはじまって数時間後、弟は「蔵」の屋根裏で熟睡しているところを発見されました。すると母親がすかさず弟のところに駆け寄って行って涙を流しながら無事だった彼を抱きしめました。弟はどうしてそんなところで寝ていたのかを繰り返し聞かれていましたが、結局何も答えませんでした。私はこんな妙な騒ぎを起こして家族を心配させる弟をなぜか少し羨ましいと思いながらその光景を眺めていました。

今年、あちこち傷みの激しかった「蔵」を取り壊すことになりました。それでふとこの弟の一件を思い出したのです。「蔵」の思い出といっても私にはこの一件以外にはほとんど何も思いあたらなかったのですが、それでも「蔵」がなくなると思うと何だか急に切ない気持ちになりました。そして「蔵」は解体業者によってあっけなく取り壊されてしまいました。

馴れ親しんだ建物が無くなってしまうときには、大切な人と別れるときと同じような感情が起こるものなんですね。今回、そのことをはじめて知りました。


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2011年7月10日日曜日

〔今週号の表紙〕第220号 お化け屋敷 山田露結

今週号の表紙〕
第220号 お化け屋敷

山田露結


おやのないこは
しんしんさびしい。
ポッケにゃ地球
カチンとさみし。
お代はみてのおかえりです。
ぼーや。
じょうや。
おはいんなさい。
「少年あります。鈴木翁二童話店」鈴木翁二著/シマモトケイ インナープロジェクト

子供の頃、地元の神社で行われる夏祭の夜店で毎年一番楽しみにしていたのが「見世物小屋」と「お化け屋敷」だった。「見世物小屋」と「お化け屋敷」はいつも神社の敷地の一番奥に並んで建っていた。

当時から「見世物小屋」も「お化け屋敷」もインチキ臭くてずいぶんお粗末なものだと子供心に感じていた。「見世物小屋」の「蛇女」も「牛娘」もつくりものだったし、「お化け屋敷」も仕掛けがバレバレでちっとも怖くなかった。

でもそのときはきっとそのインチキ臭さに何とも言えない魅力を感じていたのだと思う。親にお小遣いをもらうと友達を誘って真っ先に「見世物小屋」と「お化け屋敷」へ走って行ったものだった。


今年3月、6歳と2歳の息子たちを連れて岡崎城公園(愛知県岡崎市)へ花見に出かけた。震災直後の自粛ムードの中、どことなく後ろめたさを感じながらのお出かけであった。

公園から土手を下ると岡崎市内を流れる乙川の河川敷いっぱいに、所狭しと露店が並んでいた。平日の昼間だがけっこうな人出だった。

わた飴、金魚掬い、射的...。こういう風景だけは昔とちっとも変わっていない気がする。好きな場所である。

露天商を冷やかしながら河川敷の広場の外れまで来るとそこには「お化け屋敷」が建っていた。私の記憶では、それは私が子供の頃に夏祭で見たものとまったく同じ、あの「お化け屋敷」だった。

私はその「お化け屋敷」を見た途端、身震いがするほどのノスタルジアにおそわれ、まるで吸い寄せられるように子供たちの手を引いて「お化け屋敷」の中へと入って行ったのである。


入口で突然門の扉が開いて生首が出でくる仕掛け(入口のおじちゃんが操作しているのがバレバレ)も、血を流した落武者の人形が倒れている箇所を過ぎたところで白い布をかぶった男が「わーっ」と飛び出してくるのも、何もかも感激するほど昔のままだった。

そして、やはりちっとも怖くなかったのである。子供たちも怖がるというよりはびっくりしながらはしゃいでいた。

怖くないお化け屋敷の中を歩きながら、私は子供の頃に見た情景が目の前で実景となってフラッシュバックしているようで、たまらない気持ちになってしまった。

ほんの短い時間だったけど、子供たちと一緒に我が「あの頃」へとタイムスリップさせてくれた「お化け屋敷」に感謝、感謝なのである。