
暮田真名
強い女になろうと蛸の足洗う 樋口由紀子
「強い女」を、ひとまず「自立した女」と言い換えてみる。「自ら立つ」と書いて「自立」である。他のもの、たとえば男性や、家族に頼ることなく、自分の二本の足で地面を踏みしめて立つのだ。
でも、立っているそばから、地面がずぶずぶと沈んでいったらどうしよう。もはや立っていられないほど、ぐらぐらと揺れたらどうしよう。みしみしと音をたてて、まっぷたつに割れたらどうしよう?
人生にはしばしばそういうことが起こりうる。それならば、砂の隙間に潜り込めるような軟らかい足がいい。それも二本では不安だが、八本もあれば十分だ。いざというときのために、強力にくっつく吸盤があればなおいいだろう。
「蛸の足洗う」のはひとまず食べるためだろう。しかし、足を洗うという動作には、相手を敬う、奉仕するという意味もある。どこか蛸への憧憬や、一体化願望のようなものも感じられるのである。
掲句は『樋口由紀子集』(邑書林)所収。抄出を読むかぎり、『ゆうるりと』は「足」の句集です。
●
