
暮田真名
まな板の裏を見せ合う恋人たち ヒロハシサギ
見せ合っている、ということは、一人一枚まな板を持ち、まな板は最低でも二枚以上あるということだ。所有するまな板の枚数には個人差があるだろうが、わたしは一枚である。だからだろうか、この句の「恋人たち」はまだ同棲はしておらず、それぞれの家にあるまな板を持ち寄っているような気がする。
両面使うことにしているというのでなければ、まな板の裏をまじまじと見る機会はなかなかない。伏せられているものを持ち上げて見るという動作は、石の裏のダンゴムシを観察する行為をも想起させる。とくべつ美しくもない、秘められた領域を見せ合うという意味では、まさしく恋人たちにふさわしい行いと言えるかもしれない。
おもしろいのは、立てられたまな板は、恋人たちを隔てる壁にもなっているところだ。さながら、盾のように。近づきつつ遠ざかる、遠ざかつつ近づく。平熱の恋の句である。
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