
まつりぺきん
月へ行く たぶんあなたじゃないひとと 城水めぐみ
「月へ行く」――遠く、浮世離れした旅だからこそ、その隣には特別な誰かがいるものと思ってしまいます。
しかし、宣言のあと、一字空けの間を挟んで付け足されるのは、相手が「あなた」である可能性は低いという見通しです。
「たぶん」は、ここでは感情の迷いというより、未来の見積もりに聞こえます。
何かを知っている人だけが、そう言えます。何を知っているのかは書かれていません。
書かれているのは、否定が遅れて届くことだけ。
五七五の音数に沿って読めば、中七は「たぶんあなたじゃ」で終わり、否定の「ない」は下五まで持ち越されます。
一字空けで見せた切れ目の裏で、見えない切れ目が「あなたじゃ/ない」を割っています。
見通しはついている、それでも言い切るまでに、これだけの間を要するのです。
月へ行く。たぶん、あなたではない人と。
それなのに、月へ向かう未来には、誰よりも濃く「あなた」の影が残っています。
『甘藍の芽』(2023)より
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