2019年5月20日月曜日

●月曜日の一句〔藤本夕衣〕相子智恵



相子智恵







木の影のまじはらずあり衣更  藤本夕衣

句集『遠くの声』(ふらんす堂 2019.3)所収

自然の雑木林や森ならば、枝や葉、幹の影同士が交わるようにたくさん木が生えているだろうから、街路樹か公園の木だろうか。杉などの人口林かもしれない。規模の大きさはわからないが、いずれにしても人の手が入って整然と並べられた木たちを思う。

木の影が交わらないのは寂しくもあり、すっきりと涼しげでもある。それは、夏服に衣更した時の涼しさと、その反面、慣れるまでは半袖や丈の短いボトムに手足が守られずに、心細くて寂しい感じと遠くで響き合っている。

〈木の影のまじはらず〉と言われると、自然に木の枝が思い浮かぶし、〈衣更〉では人の手足が思われてくる。一見、意外な取り合わせでありながら両者はどこか似ていて、美しく響き合っているのである。

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