2019年10月7日月曜日

●月曜日の一句〔中嶋憲武〕相子智恵



相子智恵







迷宮へ靴取りにゆくえれめのぴー  中嶋憲武

句集『祝日たちのために』(港の人 2019.7)所載

〈えれめのぴー〉とは、「きらきらぼし」のメロディで幼児が歌う「ABCの歌」の

  A-B-C-D-E-F-G(きらきらひかる)
  H-I-J-K-LMNOP(おそらのほしよ)

の、「LMNOP」の部分を「エレメノピー」と歌うあれのことだろう。城に靴を取りに行くのは『シンデレラ』を思い出したりもして、全体に童話のような雰囲気がある。

〈迷宮へ靴取りにゆく〉を、これから迷宮へ靴を取りに出発するところだと読めば〈えれめのぴー〉が〈迷宮〉の扉を開く「呪文」のように思えるし、迷宮へ靴を取りに行っている最中ならば、〈えれめのぴー〉は靴を取りに行った人が迷って出られなくなって叫んだ「悲鳴」のようにも聞こえてきて、何だか怖い。しかも平仮名で書かれていて脱力感があるので「おもしろくて、やがて怖い」感じだ。「LMNOP」のことだと知ってはいても、その意味を無化してしまうこの平仮名が妙に頭の中にこびりついてしまって、忘れられない一句となった。

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