2022年6月8日水曜日

西鶴ざんまい #28 浅沼璞


西鶴ざんまい #28
 
浅沼璞
 

 奥様国を夢の手まくら    打越(裏四句目)
夏の夜の月に琴引く鬼の沙汰  前句(裏五句目)
 宮古の絵馬きのふ見残す   付句(裏六句目)
『西鶴独吟百韻自註絵巻』(元禄五・1692年頃)
 
 
 
「三句の放れ」を吟味します。

一言でいえば、奥様の夢に現れた異物「琴引く鬼」を、都の絵馬(道化絵)に見立て替えての転じでしょう。

これを「眼差し」の観点からみると――奥様の異様な夢を描くホラー作家の「眼差し」から、それを京の絵馬に見立てるルポライターの「眼差し」への転換とでもいえばよいでしょうか。
 
 
 
さて今回の若殿(若之氏)からのメールは、前回ふり返った第三(難波の句)との比較論に言及したものでした。

〈なるほど、難波から京都へ。自註を踏まえると、趣向の違いが多角的にみえてきて面白いですね。「第三」の#5へのリンクと別に、「難波では」のところに、#6へのリンクも追加しておきます。自註への言及があるのはこちらでしたので。〉

「ざんまい#5へのリンクだけやのうて#6の追加、気の利いた編集やな」

はい、いつもいろいろと校合してもらってます。

「わての工房も団水はん要に若手がいろいろ編纂してくれとる」

あー、やっぱり「西鶴工房」説、本当だったんですね。

「そんなん言われとるんかい」

はい、出版のスピードと量、さまざまなジャンル、しかも凝った編集、で「西鶴工房」説が。

「当たっとるけど、これ以上は喋らんで。軽口は禍の門やからな」

えーっ、得意の軽口たたいて門あけて下さいよ。

「知らんがな。門いうたら貞門や。ヘタにたたいたらまた言い争いになるやろ」

……確かに。
 

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