2025年10月24日金曜日

●金曜日の川柳〔広瀬ちえみ〕樋口由紀子



樋口由紀子





ゆっくりとひつまぶししてゆきなされ

広瀬ちえみ(ひろせ・ちえみ)1950~

ひらがなのビース玉を糸に通していて、うっかり「ま」と「つ」の順序が前後した。やり直そうかと思ったが、これはこれでまた違った光沢が出たのでそのままにしておく。そんな川柳である。しかし、ビーズ玉のようにはコトはスムーズに運ばない。「ひつまぶし」と「ひまつぶし」は似て非なる、まったくベツモノで、一字違いの大違いで独り立ちしている。

言葉にはどう振り払っても、意味が張り付いている。しかし、伝達、説明、報告だけが役目ではない。川柳は意味をターゲットにする。こだわりながら、揶揄(からか)い、意味そのものを味わい、可笑しさや愉しさにたどり着く。意味は謎であり、この上なく魅惑的である。『雨曜日』(2020年刊 文學の森)所収。

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