2011年9月16日金曜日

●金曜日の川柳 樋口由紀子


樋口由紀子
  







菊貰う菊より美しい人に

丸山弓削平 (まるやま・ゆげへい) 1907~1990

菊の美しい季節になる。私は田舎に住んでいるので、田畑には菊がよく植えられているのをよく目にする。それらは菊花展に出品するような豪華で丹精のこめたものではなく、野菜が植えられている隅に仮住まいしているように咲いている。そのほとんどは小菊である。子どものころ(生家も田舎だったので)、なぜ田畑に菊を植えるのかが不思議でならなった。だれに見せるつもりのものなのかと思った。あとでそれは仏壇や墓に供えるためのものだと知り、納得した。

仏さんにと菊をもらったのだろう。そう言ってくれた人は美しかったのだろうが、そのように思った弓削平の心根のやさしさがあらわれている。

岡山県のほぼ中央に川柳の町「弓削」がある。丸山弓削平は戦後の混乱の中、「川柳によって新しい町づくりをしよう」と昭和24年に弓削川柳社を創立し、「川柳の町」運動に尽力した。

2011年9月15日木曜日

●おんつぼ40 Stan Getz; Focus 西原天気


おんつぼ40
Stan Getz; Focus

西原天気


おんつぼ=音楽のツボ



ジャズの人がストリングス付きでアルバムを録音する、あるいはクラシックの交響楽団と共演するという企画のアルバム、ハズレも多いようですが、アタリ(と私が思う)で有名なのは、チャーリー・パーカーの「with strings」。あと、ビル・エヴァンス・トリオの「with symphony orchestra」は、好悪が分かれるでしょうが、私、けっこう好きです。

で、スタン・ゲッツ(1927 - 1991)の「フォーカス」。スタン・ゲッツといえばボサノヴァなわけですが、このアルバムについては、そのイメージははずしたほうがよいです。

アレンジのエディー・ソーター(1914 – 1981) は、スイングジャズ時代からキャリアを積んだアレンジャー。でも、この「フォーカス」、あまりジャズっぽくはありません。いい意味でイージーリスニング的な肌合い。

1961年秋録音で、発売は1962年。日本では植木等「無責任一代男」「ハイそれまでョ」や橋幸夫と吉永小百合の「いつでも夢を」がヒットした年ですね。このギャップ!

ま、それはともかくとして、「なつかしモダン」な香りと知的な挙措を備えたのこの「Focus」、夏の終わりから秋にかけてのひとり居にぴったりと思いますです。


それにしても、ウィキのスタン・ゲッツの項の貧弱なこと貧弱なこと。草葉の陰で泣いてるぞ。



2011年9月14日水曜日

●満月

満月

2011年9月13日火曜日

●clair de lune

clair de lune

2011年9月12日月曜日

●月曜日の一句〔青山茂根〕 相子智恵


相子智恵








塔あらば千の虫籠吊るしたし  青山茂根

句集『BABYLON バビロン』(2011.8/ふらんす堂)より。

この〈塔〉が私に、異国の塔(たくさんの鐘がディンドンと鳴る、石造りの古い教会や、時計塔のような)を思わせるのは、『BABYLON バビロン』という句集の佇まいと、異郷をゆく漂鳥のように一見華やかに見えながら、心の奥底には漂泊の寂しさと諦念、だからこそ詩に生きようという強い矜持の入り混じった、作者の無国籍な句群による。

なにしろ〈千の虫籠〉である。虫一匹を身近に鳴かせ、秋の風情を楽しむ日本の情緒の中の〈虫籠〉とはスケールが違う。吊るされた高い塔の上で、夜ごと鐘の音のように、一斉に鳴き募る囚われの千の虫たち。なんと美しく、そして残酷な夢であろうか。

そして私はさらに夢想するのだ。

ある晩、この囚われの〈千の虫籠〉が一斉に解き放たれ、千の鳴き声とともに、虫たちが夜空に飛び立つ姿を。そのキラキラとした羽が星屑のように、夜空に撒き散らされることを。