2012年6月18日月曜日

●月曜日の一句〔金子 敦〕 相子智恵


相子智恵








夏料理運ぶや玩具またぎつつ
  金子 敦

句集『乗船券』(2012.4/ふらんす堂9)より。

〈夏料理〉は、見た目にも涼しく、味のさっぱりとした夏向きの料理の総称だから、どんな料理を運んでいるのかは、はっきりとはわからない。

だが、この句の夏料理は〈玩具またぎつつ〉の生活感によって、おそらくあまり手の込んでいない、ごくごく家庭的で気軽な料理だろうと想像できる。一枚のスケッチ画のように、軽いタッチで一瞬を活き活きと描写していて、気持ちがいい句だ。

なにより、子供がいる一家庭の暮らしに向けられた作者のまなざしがあたたかい。色とりどりのおもちゃをまたいで運ばれる涼しげな手料理という、幸福な夏の日の記憶。ノスタルジーを感じさせる一句である。

2012年6月17日日曜日

〔今週号の表紙〕第269号 灯台 青山茂根

今週号の表紙〕第269号 灯台

青山茂根


空と白の対比。城ヶ島灯台です。

先日、2012年6月3日号の「週刊俳句」編集後記にて、村越敦さんが書かれていた、「週俳は、どこまでも自由で、どこまでもアナーキー。」という箇所を読んで、この写真を撮ったことを思い出しました。

何気ない景も、切り取り方でまったく別の意味が生まれることもある。俳句って、そんなものでしょうか。

英国の児童文学作家、エドワード・アーディゾーニに、『チムとうだいをまもる』(福音館 2001)という本があります。原題は、「TIM TO THE LIGHTHOUSE」 by Edward Ardizzone, Oxford, U.K.,1968。英国の当時の灯台の断面図が描かれていて面白いのですが、ストーリーはちょっとスリリングで、「なんぱせんあらし」に灯台守が襲われて怪我をする話です。

「なんぱせんあらし=難破船荒らし」とは、大きな船が近くを通る時刻に、本物の灯台の光を消して近くに偽者の光をつけ、偽者の光にだまされた船が岩に乗り上げ難破すると、浜に打ち寄せられた金目の積荷を盗む泥棒のことです。

いや、この場合、被害者が出ますから強盗の一種というべきでしょうか。(フランス、ブルターニュ地方沿岸の難破船荒らしの話。参考までに。http://www.kourita.com/jp/zukan/ag_izanabi.html

これが児童文学の題材になるということは、周囲を海に囲まれた英国ではしばしばそのような事件が起きたのでしょう。

灯台、時々思い出したように触れてみたくなります。


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2012年6月15日金曜日

●金曜日の川柳〔岩根彰子〕 樋口由紀子


樋口由紀子








あぶらあげあるとあんしんしてしまう


岩根彰子 (いわね・あきこ) 1942~

油揚げは冷凍保存できるので、我が家の冷凍庫にはいつでも2、3枚は常備している。油揚げは地味だがなくてはならない食材で、あるとないのでは料理の出来ばえは格段に違ってくる。

が、掲句はひらがな表記にすることのよってそのような生活臭は緩んで、おっとりする。〈油揚げ有ると安心してしまう〉と漢字を入れて書くと単なる事実を述べているだけに終ってしまって、ほんとうにつまらない。なぜ、ひらがなの羅列が事実を含みながらも、意味はどうでもよくなってくるのだろうか。

まず、視覚。まんまるいひらがなが絵のように跳ねて、並んで、やわらかく、目で楽しませてくれる。そして、聴覚。前半の四つの「あ」、後半の三つの「し」のたたみかけるような音。目と耳が言葉の隙間を想像させ、実用の意味を超え、のどかな雰囲気をかもしだした。「Tuzuki」(2012年3月刊)収録。

2012年6月14日木曜日

●コモエスタ三鬼32 うごく 西原天気

コモエスタ三鬼 Como estas? Sanki
第32回
うごく

西原天気


枯蓮のうごく時きてみなうごく  三鬼(1947年)

句のどこをとっても「描写」。「物語」も「鮮烈なイメージ」もない。三鬼作のなかでは、俳句の伝統的な骨法を用いた成功例、言い換えれば当時の「伝統俳句」畑から生まれてもおかしくない句にも見える。つまり、新興俳句っぽくない(なにしろ沖積舎『西東三鬼全句集』では、この句の次が《露人ワシコフ叫びて柘榴打ち落す》なのだ)。

しかしながら、「動くときは動くんだし、動かないとき動かないんだよ」てなふうに読めば、ある種メタ的な達観にも思えてきて、マジメな描写とはちょっと違う。三鬼は、やっぱり不思議だなと思う。


なお、この句は、日めくり詩歌 俳句 高山れおな (2012/06/08)で取り上げられている。
http://shiika.sakura.ne.jp/daily_poem/2012-06-08-9166.html


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