2013年12月9日月曜日

●月曜日の一句〔鍵和田秞子〕相子智恵

 
相子智恵







鷹放つ山の骨相あらはなり  鍵和田秞子

「2013年100句選 高野ムツオ選」(『俳句年鑑』2014年版 株式会社KADOKAWA)より

きりりとした句だ。山の骨組みがあらわに見えているというから、山じゅうの木の葉が落ちた、裸木ばかりの冬の山なのだとわかる。葉が茂っている春から秋にかけての山とくらべて、全山の木の葉が落ち、ひとまわり小さくなった、枝ばかりのゴツゴツとした冬の山は、なるほど肉の落ちた骨ばった人体のようで、〈山の骨相あらは〉という表現に驚きつつも納得した。

そして〈鷹放つ〉。鷹匠が放ったのだろう。力強く飛び立った鷹を追う視線の先に、骨相があらわとなった冬の山が聳え立つ。一点の鷹の色とその鷹が向かう大きな山の色とが響きあい、〈鷹〉と〈骨相〉の硬いK音もまさに対峙するように響き合っている。力強く堂々とした一句である。



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