2024年9月9日月曜日

●月曜日の一句〔守屋明俊〕西原天気



西原天気

※相子智恵さんオヤスミにつき代打。




白雲の落としてゆきし木槿かな  守屋明俊

木槿は背丈のある木なので、花に目をやると、おのずと見上げることになり、空が、雲が、目に入ってくる。空や雲と「相性」のいい花のひとつだろう。

白い雲は、黒みの濃い雲と違って、雨は落とさない。白い木槿を落とすのだと、この句は言っている。

「落としてゆきし」で、雲が動いていること、その頭上にはもうないかもしれない雲の動きが伝わる。

掲句は守屋明俊句集『旅鰻』(2024年1月/ふらんす堂)より。

2024年9月7日土曜日

◆週刊俳句の記事募集

週刊俳句の記事募集


小誌『週刊俳句』がみなさまの執筆・投稿によって成り立っているのは周知の事実ですが、あらためてお願いいたします。

長短ご随意、硬軟ご随意。※俳句作品を除く

お問い合わせ・寄稿はこちらまで。

【転載に関して】 

同人誌・結社誌からの転載

刊行後2~3か月を経て以降の転載を原則としています。 ※俳句作品を除く

【記事例】 

俳誌を読む ≫過去記事

俳句総合誌、結社誌から小さな同人誌まで。かならずしも号の内容を網羅的に紹介していただく必要はありません。

句集を読む ≫過去記事

最新刊はもちろん、ある程度時間の経った句集も。

時評的な話題

イベントのレポート

これはガッツリ書くのはなかなか大変です。それでもいいのですが、寸感程度でも、読者には嬉しく有益です。



そのほか、どんな企画でも、ご連絡いただければ幸いです。

2024年9月5日木曜日

〔人名さん〕草間彌生

〔人名さん〕草間彌生


逃げ切れぬ草間彌生の南瓜からは  岡田由季


岡田由季句集『中くらゐの町』2023年6月/ふらんす堂



2024年9月4日水曜日

西鶴ざんまい #66 浅沼璞


西鶴ざんまい #66
 
浅沼璞
 

 花夜となる月昼となる   打越
名を呼れ春行夢のよみがへり 前句
 弥生の鰒をにくや又売る  付句(通算48句目)
『西鶴独吟百韻自註絵巻』(1692年頃)

【付句】二ノ折・裏12句目。 弥生=春。 鰒(ふぐ)=本来は冬。産卵期の春は毒性が最も強く、菜種河豚という。

【句意】三月の河豚を憎いことにまた売っている。

【付け・転じ】前句の甦った人の苦しみの原因を毒河豚とし、魚売りへの憎しみに転じた。

【自註】「*時ならぬ物は食する事なかれ」とふるき人の申し伝へし。前句の病体は、毒魚(どくぎよ)の*とがめにして、なやみたるありさまに付け寄せける。又、その折ふし、鰒を売る声、いづれもかなしき時の事ども思ひあはせて、魚売りをにくみし。
*時ならぬ物は……=「時ナラザルハ食らハズ」(論語)。 *とがめ=中毒

【意訳】「季節外れのものは食べてはならない」と古人は申し伝えた。前句の病体の句は、毒河豚にあたって苦しんだ有様で、それに付け寄せた。また、そのような時、河豚を売る声(を聞き)、みな(病人の)気の毒な状態を想起して、魚の行商人を憎んだ(と句作した)。

【三工程】
(前句)名を呼れ春行夢のよみがへり

時ならぬもの食するなかれ   〔見込〕
  ↓
  弥生の鰒になやみたるさま   〔趣向〕
    ↓
   弥生の鰒をにくや又売る     〔句作〕

蘇生した人の不調の原因を季節外れの食中毒とみて〔見込〕、〈春にどのような食中毒があるか〉と問いながら、菜種河豚と思い定め〔趣向〕、「行商人の売り声に対する憎悪」を題材とした〔句作〕。

 
ちょっと調べたんですが、大矢数に〈命知らずや河豚汁の友/床に臥し肩で息して北枕〉って付合がありますね。
 
「そやな、河豚汁は何句か詠んだはずや」
 
でもまだ息があるのに〈北枕〉ってひどいんじゃないですか。
 
「備えあれば憂いなし、いうやろ。北枕の準備あれば、逆に生き返るいうもんや」
 
はぁ、また諺ですか……。

2024年9月2日月曜日

●月曜日の一句〔矢島渚男〕相子智恵



相子智恵






何をしにホモ・サピエンス星月夜  矢島渚男

句集『何をしに』(2024.7 ふらんす堂)所収

ホモ・サピエンスは、今の私たちの直接の祖先。ホモ・サピエンスがそれまでの人類と違ったのは、言葉を操るようになったことであった。言葉によって物事を複雑に考えられるようになり、環境への適応力が増していったといわれる。

さて、掲句。ホモ・サピエンスは進化の過程で生まれたのであって、「何かをするために」地球上に登場してきたわけではない。だから、掲句はもちろん、今の私たちに向けた批評をもった上での「何をしにきたのか」なのだろう。いったい私たちの祖先は、何をしにこの地球に現れて、そこからはるか進化した後の私たちは、実際に何をしてきたのか。あるいはこれからも続く進化の過程で、何をする(しでかす)のか。

  酢海鼠を残人類としてつまむ

  人類は涼しきコンピューター遺す

  ヒト争ひ極地の氷溶けつづく

そんな批評眼が背後にあることは、本書にこのような句があることからも分かる。様々な星が瞬く〈星月夜〉に、地球に現れたホモ・サピエンス(の末裔である私たち)は、地球に〈何をしに〉きたのだろう。私たちは、このたくさんの星空の中のひとつである地球にとって、どんな存在なのであろう。