相子智恵
何をしにホモ・サピエンス星月夜 矢島渚男
句集『何をしに』(2024.7 ふらんす堂)所収
ホモ・サピエンスは、今の私たちの直接の祖先。ホモ・サピエンスがそれまでの人類と違ったのは、言葉を操るようになったことであった。言葉によって物事を複雑に考えられるようになり、環境への適応力が増していったといわれる。
さて、掲句。ホモ・サピエンスは進化の過程で生まれたのであって、「何かをするために」地球上に登場してきたわけではない。だから、掲句はもちろん、今の私たちに向けた批評をもった上での「何をしにきたのか」なのだろう。いったい私たちの祖先は、何をしにこの地球に現れて、そこからはるか進化した後の私たちは、実際に何をしてきたのか。あるいはこれからも続く進化の過程で、何をする(しでかす)のか。
酢海鼠を残人類としてつまむ
人類は涼しきコンピューター遺す
ヒト争ひ極地の氷溶けつづく
そんな批評眼が背後にあることは、本書にこのような句があることからも分かる。様々な星が瞬く〈星月夜〉に、地球に現れたホモ・サピエンス(の末裔である私たち)は、地球に〈何をしに〉きたのだろう。私たちは、このたくさんの星空の中のひとつである地球にとって、どんな存在なのであろう。
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