2014年10月24日金曜日
●金曜日の川柳〔梅村暦郎〕樋口由紀子
樋口由紀子
にんげんの胃袋から人間の骨
梅村暦郎 (うめむら・れきろう) 1933~
強い表現にどきりとする。怪奇ものではない。社会性川柳である。最後の「骨」に胸を突かれる。「骨」だからすでに死んでいる、殺されたのだろうか。「にんげん」と「人間」と表記が使い分けられている。「にんげん」でいた人、「人間」にならざるをえなかった人、どちらも人である。
昭和33年の作。昭和31年の経済白書の結語に「もはや戦後ではない」と記された。その頃から日本は高度経済成長の国へと邁進していく。人が人の犠牲の上で経済を発展させていく社会を批判した。それは現在に通じる。
梅村暦郎は〈月のない深夜に 虹の種子を蒔く〉〈汽車停る 昨日と同じ暮景にて〉のような抒情的川柳を書いていた。掲句のような川柳を書かねばならないと思ったのだろう。
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